「俺は猗窩座、お前…稀血だな。良い匂いがする」
・・・
狩猟者、私の生きる道はそれ以外無かった。
死んだ父には遺産など無く、残されたのはたった三丁の狩猟銃のみ。幼い頃から父の後を追いかけて狩猟の技術を盗み持っていた私は父の死後、すぐに狩猟に取り掛かったのだ。
「急いで血抜きしなきゃ」
町に近づく害獣の処理が私の仕事だ、江戸の町に比較的近いこの集落も山に囲まれている為か閉鎖的である。父が亡くなって一時はどうするか町民会議が行われたが私が銃を取ると喜んで背中を押してくれた。
狩猟は苦じゃ無い。動物の命を頂くという大変重い仕事ではあるものの肌に合っていたのかその腕はどんどん成長していった。
先程仕留めた獲物を担いで運び血を抜く、そうこうしている内に冬の空はすぐに暗くなっていた。
獣臭くなった身体を洗い湯浴みをし、私は一生をこんな風にして過ごすのだと信じて疑わなかった。
ーーーこの時がくるまでは…
明日も早い、そろそろ寝ようと思い布団に入るとドンドンッと大きな音を立てて戸を叩く音がした。こんな時間に来客…?
警戒ながら上がり口に向かうと、私を大声で呼ぶ声が聞こえる。何事かと思い戸を開けるとそこには町の住民の一人が焦った顔で立っていた。
「苗字さん!助けてくれ!!」
「どうなさったのですか、そんなに慌てて…」
「娘が…娘達が居なくなってしまったんだ!」
「なっ!」
聞くところによると、先程暗くなったと同時に何人もの町娘達が急に行方を晦ましたらしい。焦る気持ちを抑えられないまま私は町に下りた。
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「これは…」
急いで町に向かうとそこは混乱の海と化していた、何人もの娘が居なくなったのがわかる。
「苗字さん!娘が居なくなってしまったんだ、家にも町内のどこにも居ない…!森の中を探してほしいんだ!」
「森の中…わかりました、急いで向かいますのでまずは行方不明者の人数の把握をさせて下さい!」
落ち着いて下さいと言いたい所ではあったが自分の娘が居なくなって落ち着いて居られるわけがないだろう。宥めるように話を聞いたが、なんとも奇妙な話で本当に一瞬目を離した隙に居なくなり誰も目撃者が居ないと言う。
ある者は神隠し、ある者は鬼が攫った等、非現実的な誘拐に皆が混乱するのもわかる。もう既に何人かは森に入って探しに行っているらしいが今の時期は熊がまだ冬眠してるため大きな危険はほとんど無い。しかし、準備もしなければ遭難する危険だってある…早く森に戻らなければ大変なことに!
聞き取りを早々に切り上げて森に行こうとすると、怪しい人物を見つける。黒の隊服、後ろ姿には”滅”の文字。あまりにも怪しい人達だ、二…三…四人を居るな…。狩猟の護身用にと持ち歩いている短刀を取り出して小さく構えた。
「(刀を持っている…人攫いをしている気配は無いけど、何かを探している…?都心の警備隊とかかな…?)」
恐る恐る近づくとその四人が一斉にこちらを振り返る。驚いた、足音も気配も立てて居ないと言うのに…!
その四人は私に対し抜刀する気配はない、一人がこちらに近づいてきた。咄嗟に短刀を構え直し近づくなと警告する。
「この町の住民か?」
「そうですが…貴方達は誰ですか!この町で何をしているんですか!」
「待て、俺達は鬼を狩っている鬼殺隊だ。ここらで鬼の情報が入り調査に来たのだが住民が家に居ない、何があった。」
鬼殺隊…?何処かで聞いたことがあるような気がする…。
その時ふと、父との約束を思い出した。
『俺は夜には狩猟は行わない、名前はなんでだかわかるか?』
『迷子になっちゃうから?』
『それもあるが…夜は鬼が出る。狩猟銃では鬼を狩る事が出来ない。』
『鬼、こわい…とおさんでもできないの?』
『無理だ、でも鬼狩り様が鬼を退治してくれる。だから夜は鬼狩り様に任せるんだ、狩猟地区に住民が入らないようにするのと一緒だよ。危ないし邪魔しちゃいけない』
『ふ〜ん、わかった!』
私に夜出かけないようにと言い聞かせる為の作り話だと思っていた。鬼なんて子供を怖がらせるのにうってつけだし、鬼が本当に居るだなんて思いもしなかったから…。
「鬼狩り…様」
「知っているのか、話が早い。何があったか話してはくれないか」
「住民は皆、町長の家に居ます。実はーーー」
私は父の言葉を信じてこの”鬼殺隊”の方々に協力を仰いだ。経緯と森の地形を説明し一刻を争う事態なのですぐその鬼殺隊とは別れる事になった。
危険だから俺達に任せて、とも言われたが町の住民が居なくなったのだ。お節介だと馬鹿だと言われても関係無い…私も森に入っていった。
陽の下で貴方と 1
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