実弥に先日「好いてなきゃこんなことしねぇだろぉ・・・」と言われてしまった!数回肌を合わせる内になんとなく大切にされてるなと思っていたけどまさかそんな風に想ってくれていたなんて

愛情表現が不器用な彼だけど一度懐に入れるとここまで甘めかしてくるのかと最初は戸惑ってしまった程で、距離が近い話し方をしても全く気にしていないようでむしろたまに丁重語を使うと気持ち悪いと言われるのでこういった関係になってからは言葉を崩している。

「寒くねぇかァ?」
「実弥の胸元見てる方が寒いよ」
「うるせえ」

頭に軽い手刀をされた、効果音を付けるとぽこっと言うぐらいの。うるせえなんて言いながらはにかんでくる実弥の笑顔は、反則だよ・・・。
たまたま任務終わりに彼に遭遇し一緒に帰路に着いている、決して待ち伏せしたわけじゃない。しようとは思ったけど
鬼狩りの仕事は楽では無いが実弥に出会ってからは些細なことが幸せに感じて日々の意欲に満ち溢れている。幸せなことばかりは永くは続かないことは理解しているけど、今その幸せを大切にしないでその先の暗いことばかり考えても仕方無い。
二度失いかけた命、もう鬼殺隊として命を落とす覚悟は出来てる。その為にも今は目一杯今この時を噛み締めなきゃ・・・!

でも、この関係はどういう関係なんだろうか。恋仲?性的な関係?好いているの時点で聞けば良かったのだろうけどそれよりもその言葉の方が嬉しすぎて聞きそびれてしまった。
今は外だから実弥が恥ずかしがるし駄目だ、今度誘われたときにでも聞いてみよう。


「名前…腕、怪我してんぞォ」
「嘘!?本当だ・・・実弥に会えるかもと思って任務終わって速攻帰ってきたから気づかなかった!」
「テメェ、自分の怪我も把握できてねぇのかよ」
「それ、実弥にだけは言われたくない。自分だって怪我放置してるくせに」

実弥は舌打ちをすると自身の頭をガシガシと掻きながら「名前は女だろォ、ちったぁ気にしろ」と言いながら腕を引っ張り腰から瓢箪を取り出し水をかけてくれた。豪快に見えるが意外と常識人の彼は手ぬぐいも懐から取り出すと私の怪我に巻いてくれる。

「へへっ、実弥ありがとう!」
「・・・おぅ」

この人はなんて可愛いのだろう、照れている彼を見つめているとプイッと顔を逸らされた。それに笑うと実弥は先に進んでしまう。
着いてくるなとばかりな態度だけど疲弊している私が追いつけるような速度で歩く実弥の後ろを着いていく。彼に恋をして本当に良かった。


「ねぇねぇ、私と実弥って恋仲でいいんだよね?」
「うるせェ、違ェ」
「いいよね?実弥、私のこと好いてるって言ってたもんね?」

私の押しに負けたときのこの面倒くさそうにする顔が大好き、結局我慢出来なくて恋仲か確認しちゃったけど今聞いて正解だったな!実弥ってほんと可愛い!





・・・








伝令が届いた、空席だった水柱が埋まったらしい
私自身も水の呼吸の使い手だ。階級はまだまだだけどふんわりとどこか期待してしまう“継子”への憧れ。私は多分実弥と出会ってから欲張りになったな・・・うん、でも今度会うだけ会いに行ってみてもいい気もする。

「実弥も粂野さんも甲だよね?」
「んだよ、今更」
「ううん、水柱様の席が埋まったけど風柱はどっちがなるのかなって思って」
「あァ!?俺だろォ・・・まあどっちがなったとしても恨みっこなしだ」

実弥と粂野さんは仲が良い、お互い背中を預けられる兄弟みたいなものだと思う。やっぱり同門っていうのは特別なのかな、私はそれ以外の情報は好きな食べ物と誕生日ぐらいしか知らない。
これから知っていけばいいけどやっぱり二人の信頼関係にはちょっぴり嫉妬してしまうなとか思ったり思わなかったり・・・

実弥ぐらい強くならないとやっぱり“鬼殺隊の信頼に置ける仲間”とはみてもらえないのかも。事あるごとに弱ェ、雑魚、辞めろと言ってくるしそれならばやっぱり水柱様に継子にしてもらうしかない!











「俺は水柱じゃない」

「え・・・?」
「俺は水柱じゃ……」
「え!?水柱様じゃないんですか!?」

水柱邸に通い始めて三回目に彼は口を開いた
この人が冨岡義勇様で間違いないよね??どういうこと?

「あの、どういう意味でしょうか・・・?」
「俺に話しかけても時間の無駄だ」
「冨岡様!お願いします、強くなりたくて!」

「お前は水柱になれる器じゃない」

一瞬沈黙が続いてしまった、いや、わかるよ?私はそんな強いわけじゃないし継子になんて私の甘々思考から来る妄想だ。でも少しくらい稽古してくれてもいいよね!?打ちのめしてくれてお前は弱い鍛え直せぐらい言ってくれてもいいよね!?

ぐうううううううぅぅぅ・・・

・・・お腹の音?お腹の音鳴った今?
聞き間違いじゃなければ冨岡様のお腹の音

「あの、飯炊きでもしましょうか?近くに魚屋があったので鮭大根でも・・・冨岡様、お顔・・!」

相当お腹空いてたのかな?とんでもない笑顔だ・・・吉と受け取った私は急いで買い物を済ませて水柱邸の炊事場で鮭大根を作った。
残さず食べてくれた冨岡様は信じられないことにその日稽古を付けてくれたのだ、これからは週一で食事を作るという条件と引き換えに!
稽古は本当に死ぬほど辛い内容でそれこそ打ちのめされたけど、実弥と肩を並べるためなら血反吐を吐いてでも食らいつかなきゃ駄目だ、ボロボロになるまで稽古してもらいその日は実弥の所にも寄らずに床に着いた。







・・・





「私、水柱様のところで週一で稽古してもらえることになったよ!」
「・・・はぁああ!?てんメェェ、なんで水柱なんかに稽古頼んでんだ!俺でも匡近でも頼めただろォ!」
「だって実弥は私に稽古付けてくれないじゃん!粂野さんに頼もうにも結果は一緒でしょ!」

押し黙る、私に単純な剣術の稽古さえ付けてくれないのは最初からで実弥は私が強くなることを拒んでるようにもみえる、まるで鬼殺隊を辞めてほしいみたいに。真っ直ぐに見つめ合うと血走った目からは怒気が伝わってくる、負けちゃ駄目だ

「実弥みたいに強くなりたい、それで沢山の人を救いたいの。私が助けてもらったみたいに」
「・・・・ハァ・・勝手にしろォ!」
「ごめんね、心配してくれてありがとう」

抱きつくと優しい手が頭を撫でる、私が鬼殺隊として強くなればその分強い鬼に当たることを心配してくれるんだろうな。それでもって私が強くなりたいことも汲んでくれている、実弥は本当に優しい。


「・・・ッチ、週一で男の所かよォ」
「?実弥、なんか言った??」
「なんでもねェ」








後に風柱になった実弥と水柱の折り合いが悪くなるのは言うまでもない。






.