「でも不死川先生って絶対彼女いると思う!」
これは、彼女の俺に対しての評価だ。
女性教師達で何やら盛り上がっているようだったからコッソリと聞いていると意中の女の口から出た言葉。勿論俺だって聞くつもりは無かったが、他の女教師が「不死川先生って独身なの知ってた?」と聞こえてきて俺の話かァと思って少し覗けば意中の相手苗字名前が居たわけだ。
黙って聞いていると彼女は俺に女が居ると言いやがる。いねぇっつの、結構態度で示してたつもりだったが鈍感過ぎて溜息が出た。
「だってね、ああ見えて案外女慣れしてると思わない?それにガツガツしてないっていうか、余裕がある!」
苗字の言葉にワッと周りが盛り上がった。
「わかるわかる、さり気ない優しさと男気ね!私てっきり既婚者だと思ってたわ」
「生徒とか保護者にも厳しいけど、決して綺麗なママにも靡かないじゃない?」
「あの胡蝶先生にも臆さないで普通に接してるし!」
思わず頭を抱えてしまう、確かに他の女なんて眼中になかった。まァ女だからなあと思って出来るだけ優しくは接していたが、要らぬ心配だったのだろう。
だが、これで彼女達の中では……苗字の中では俺が女が居ることが確定された。苗字には露骨に態度に出してたっていうのに、クソっ
「だ、だよね!」
そう言いながら少し盛り上がると自然とその場は解散された。どうやら苗字だけその場に残ったようで俺はさっきのことを訂正してやろうと顔を出すと彼女は廊下の窓から顔を出し項垂れていた。
「不死川先生、彼女、いるよねぇ……」
「いねぇぞォ」
「へ!?不死川先生!!」
項垂れている横に静かに並び俺はコイツの頭を掴んだ。
少なからず俺の目には苗字が”俺に女がいる事”に落ち込んでいるように見えて、俺の心は微かに弾んでいる。
「なあにが女慣れしてるだァ?」
「……そういうとこです」
「……俺がこんな態度取るのはテメェだけだァ」
なりふり構ってられねェな、掴んだ頭をわしゃわしゃと撫でて苗字に向けて笑うと彼女は顔を真っ赤にした。
ーーーだから、それが可愛いんだっての
「そういうとこです!!」
「くくっ」
更に俺が笑うと苗字はつに手で顔を隠した。
俺はその手を掴んで顔を出させる、あーー……ここが学校じゃなきゃ確実に手出してたな
「好きだ」
「え……ええ!」
「好きだ、付き合ってくれ」
真っ赤な顔は驚きの表情に変わる
手応えはある、どっちだ……。
じっと待っていると苗字はまた顔を真っ赤にさせて俯いた。
「ここ、学校ですよ……」
「あァ、嫌なら断ればいいだろォ」
いきなりだったしな、少しづつ距離を詰めるか。諦める気もねェしな。そう思いその場を離れようとすると苗字が俺のシャツの裾をそっと掴んだ。
「……私も、好きです」
「ははっ!」
こんな可愛い顔、他の野郎には見せられねェな
俺は苗字を包むように抱きしめた。
6:優しくなんかならなくていい
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