炎柱、鬼殺隊、人喰い鬼

何度も何度も夢に見た悪夢に似た出来事

愛する者を残し死にゆくその光景は、誇り高き背中の筈なのに……今の俺には悪夢のように映るーーー




名前を抱きしめながら寝てしまっていたらしい、少し前に同棲を始めたばかりでまだ物の少ない部屋を見渡す。
散らかった空き缶を見ながら昨日の情景が思い出される

「(酔って寝てしまったか……)」

不甲斐ない、前は酒で酔う事など殆ど無かったはずなのに。
名前と同棲を初めてからは、気が緩みっぱなしのようだ
時計は、丁度午前零時。また明日も明後日も彼女と一緒にいれることが嬉しくて布団をかけ直し、その露わになっている首筋に口づけをした。



















「名前、おはよう!」
「んっ、おはよう……杏寿郎」

俺とは違い、寝起きの悪い彼女の頬におはようの意味を込めたキスをするとその白い肌が真っ赤に染まっていった。

「起きた時に名前が居るというのは実に良いな!」
「杏寿郎早すぎる、今日休みだよ……」

彼女の笑顔は夢で見た愛おしい姿に重なり時より切なくなるが、起きた時に彼女が隣に居て毎朝がとても幸せだ。

「朝食を作ってみたのだが、食べれそうか?」
「え、杏寿郎が?料理出来ないでしょ…」
「見様見真似だ!」

俺の言葉に笑い出す名前が可愛いらしくて抱きしめると、彼女は擦り寄りながら抱きしめ返してきた。

「ごはん、ありがとう」

好きな女と同棲し、毎日彼女の飯を食べれるというのは幸せなことだがたまの休みぐらいゆっくりと過ごして欲しいと思い行動に移したが正解だったようだ。




朝食の出来を見た彼女は「男飯……!」と言いながら笑っているが全て平らげてくれた。

「ごちそうさまでした!」

名前は、いつも笑っている。
……たった一度だけ泣いたのは、夢の中で俺の居なくなった世界に花を手向けているときだけ。

そんなことは、絶対に起こさせない。

もう二度と手放す事などないように
もう二度と名前を泣かす事などないように

「名前、愛してるぞ」
「なに、急に……私も愛してるよ」

夢で伝えられなかった言葉、何度でも唱えよう。

「今日は食器を揃えに行く約束だろう?近くの大型店でも行こうか」
「うん!あ、お昼は初デートで行ったイタリアンがいい!」
「名前はいつもそこだな、うむ!支度して出発しよう」




きっと、苦しい夜はだんだんと薄れていく。それは毎朝君と一緒に居れるからだ。

ーーーー約束しよう、毎朝愛しい君に”愛している”と伝えると
















20:明くる朝


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痺莫