昼になったら友人の彼方《かなた》が弁当を持って僕の前の席に座った。

 こっちに椅子を寄せ、机の上に弁当を置いてくる。

「なぁ。お前、いつの間に康太と仲良くなったんだ? 朝メアド交換か何かしてたろ?」

「こないだね。話して、さ」

 濁しながら自分の弁当を取り出す。

 彼方は怪訝そうな顔をしていたけれど、正直に話すつもりはないし、話せない。僕は構わなくとも康太に迷惑が掛かってしまってはいけない。

「ふぅん。ま、うちのクラスは全員仲いい感じだから、お前らがメアド交換するのも時間の問題だとは思ったけど。このクラスくらいだぞ、全員名前で呼び合ってるのって」

「最初は照れたけど、名前呼びってすぐに慣れるねぇ」

「担任からの提案だったが、乗っかってよかったかもな」

 彼方が僕の弁当に箸を伸ばしてきたので、その手を軽く叩き落す。

「ケチ」

「ケチで結構。僕だって育ち盛りなんだからね。自分の分だけ食べなよ」

「そーんなちっこい身体して育ち盛りねぇ。圭って、黙ってると女子みてぇだよな。目だって大きいし。いっそ女にでもなっちまえば?」

「彼方だって目、おっきいじゃんか」

「俺はいいんだよ。大きくてもけっこうキツい感じでイケメンだろ?」

 顔を顰めて歯を剥き出し、いいっと唸ったら、鼻で笑われた。

 結局放課後になっても康太とは何も話さないままで、遊びに誘ってくる彼方を何とか帰らせ一人、教室の窓から校庭を眺める。

 ああ、綺麗だなぁ。遠目から見てもすぐにわかる。あの、整ったフォームでボールを打ち返しているのが康太だ。

 どれだけ眺めていても飽きない。それどころか、もっと、もっと見ていたくなる。

 やっと部活が終わったようなので、昇降口に下りる。

 そんなに待たないですぐに康太がやって来た。肩で息をしている。もしかして急いで来てくれたのか。

「待たせた。ごめん」

「や、大丈夫だから」

 顔。赤くなっていないといいけれど。それか、外から差し込んでくる夕日で赤みを誤魔化せていたら。

 二人で並んで道を歩くと、影が長く、細く道路に映った。二人だけで歩いていることを実感してしまう。

 康太の手が、ちょんっと、僕の手に触れた。

 ああもう駄目。心臓がもたない。

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