「ほ、ほんとうにここでするのでしょうか」

「何を今更戸惑っているのです? 一昨日から計画をしていたでしょう? 児童が帰ったか、帰っていないか曖昧な時間帯に、こうしてトイレで――」

 頬へ降ってくる、キス。

「セックスをするのだと」

 ぶわりと汗が吹き出してきた。

 蝉の鳴き声は聞こえてこない。それはそうか。雨が降っているのだもの。

 彼らは雨が降る予感を受けたらもう、口を閉ざす。今日のような日は羽が濡れるので飛べず、オスがメスを呼ぶその声を発することが無駄に繋がるから鳴かないらしい。

 ネクタイを解いて、竹川先生に手渡す。ああ、困った。

 唇の端を片方だけ吊り上げ、歪んだ笑みを見せてきた。どうやらもうスイッチが入ったようだ。

「ワイシャツは脱がないで、ズボンとパンツだけを膝まで下ろしてください?」

 優しい口調なのに、有無を言わせない強さを感じる。

 ベルトを外し、ズボンとパンツを同時に掴んで膝までずり下げたらすぐに、竹川先生が背後へ回り込んできた。両手をネクタイで強く縛られる。

「あれ、上代先生?」

 背中から抱きしめられた。股間に伸びてゆく手が見える。

「もう、やや勃起していますね。いやらしい……」

 背筋がゾクリとした。頬にまで鳥肌が立つ。

「た、竹川せんせ――」

「ねぇ、上代先生。このペニスはいったい何を期待しているのでしょう?」

 意地悪だ。何って、決まっているではないか。そのためにここへ来たのでしょうに。

 しかしそれを素直に告げることは、どうにも難しい。

 顔が熱い。首だけで振り向くと、竹川先生の口元が見えた。笑みは消えていない。

「ほら、言ってください? これ、どうして欲しいですか?」

 ペニスの根元を掴まれゆるゆるとしごかれた。甘い感覚がそこから伝わってきて、膝をもじもじと揺らしてしまう。

「どうして、って……そんなの……」

「言えないですか? そんな馬鹿な。ああ、まだ頭が教師から、いつもの淫乱な貴方へ切り替わっていないのですね」

 と、耳元で囁いてきたかと思えばさらりと前へ回り込んできた。

 目の前にしゃがみ込まれて焦る。

「スーツのズボンの裾、汚れてしまいますよ」

「別に、構いません」

 ペニスに息を吹きかけられて背筋が伸びる。

「上代先生の、淫らな顔が見られるならばどれだけでも汚れますよ」

 上目遣いで何ってことを言うのだ。

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