ああ、やっとこっちを向いてくれた。でも、目を合わせてくれないの?
……斉藤? ああ、高校時代の、共通の友人か。彼がどうかした? 結婚して、もう一児のパパになっているよね。共通のといっても君は、大学に入ってからは彼と連絡を取っていなかったように思うけれど?
僕の携帯からメールを? 彼に? いつ? 昨日、送った? どうやって? 僕を、寝かしつけた後、に?
あの抱擁は。
キスを、返してくれたよ、ね。君。キス、してくれたじゃあないか。僕へ。
だから……安心、して、眠った、のに、ここの住所と、助けを求めたメール、した、だって?
送信履歴に残っていなかったのは? 消した? それならばどうして電話をしなかったのかな。警察の番号くらいは今時子供でも知っているよね。話し声で気づかれたくなかったって、そんな。
馬鹿なことがあるか。
酷い裏切りだ。
これは酷い。酷いね。君、ねぇ、君。君!
昨日ね。僕には希望が見えたんだ。やっと元通りの君が戻ってきてくれたのだと。やっと、やっと。僕がずっと待っていた君が。君が。君が戻ってきて、僕を愛してくれるのだと。
しかし怖くて。僕は怖ろしくて。まだ、まだ駄目だと自制していた。その手、足枷を外すことはまだできないと、必死に我慢していたんだ。
ああ、ああ、笑える。笑えるよ。何なのだろうか。僕の、人生とは。
支えなんていらなかったと? よく言う。よく、言えるよね。就職活動をしても、全然、採用されず、でも、バイトもせずに、ただ只管に夢を追いかけていたくせに。他の職種を探せばいくらだって就職できただろうに、さ。それで実家を追い出されそうになって、だから僕が助けたのに。
ねぇ。ねぇ君、君。聞いているのかい。そんな風に、目をそらし続けて。
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