薄闇に、黒く


 目の前に無数の星が散らばる。ああ、凄い。天国と地獄が交互にやってきて、僕の身体を食らい尽くそうとしている。聞こえてくるけたたましい笑い声は誰のものか。この、喉の、千切れるような痛み。

「おいおい、これ以上ヤクをやらせんなよ?」

 誰かが耳元で囁く。誰か――ああ、智泰。彼の甘い声だ。いつもの、ニュアンスパーマをかけた無造作な束感を出している黒いショートカットが見たい。左斜めに上げている前髪は今も、きちんとその形を留めているのだろうか。

 薄ら暈けた視界で智泰を探そうとするが、目の前にある、男の下腹部が邪魔をする。

「はーい、秋人くん。もっとお口を大きく開こうね」

 そいつが顎を掴んでくる。言われた通りにすれば、口から唾液が滴り落ちた。すぐにそこへ生臭い塊が、強引に突っ込まれる。

「ラリってるからって歯を立てるなよ? 立てたら秋人くんを去勢しちゃうからね」

 何かが鳴っている。じじじじっと、虫の羽音のような何かが。ここはどこだったか。そうだ、こいつらから連れてこられたプレハブ小屋だ。飾り気のない室内だったはず。床は汚く、黒いシミがこびり付いている。その広さは横二メートル、縦四メートルといったところだったか。朦朧とした頭では、はっきりと思い出せない。

「ほら、ちんぽ、うまいだろ? もっと喉の奥まで咥えろよ、な?」

 身体が熱い。全身が敏感になっている。舌の上を滑るペニスは、確かに美味しい。ご馳走だ。ああ、ああ。何っていい匂い。すえた、チーズのように、発酵しているかのようなそれ。

 指で触れると軟らかな、軟口蓋に亀頭をごりごり押し付けられる。苦しさに眉がひそまった。強制的に唾液を湧かせられる。濡れた口内でじゅぼじゅぼとペニスを摩擦すれば、嘲るような笑い声が耳に届いた。

 僕は彼らの奴隷だ。車で連れてこられたここで、全裸にさせられ、腕に薬物を注射され、言われるがまま四つん這いとなり、こうして複数人から犯されているのだからそうとしか言えない。

 身体は汗にまみれていた。はっ、はっ、と荒い息が鼻から抜け、尻を叩かれれば腰が揺れる。


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