「………あの〜、ちょっと確認したいんですけどォ…」

口座への振込み履歴を見ながら、銀行のATMの前で通話をしていたのは、アドルフの妻だった。

「…そうですーアドルフ・ラインハルトの家内ですが…はい、はい〜ちょっと給与の件で……はい?」

口座に給料が振り込まれていないことを知った妻は、確認のため電話を掛けていた。しかし、返ってきた返答に眼を丸くする。

『こちらにその様な名前の者は在籍しておりません』
「えっ…」
『失礼します』

「……え…?」

一方的に通話を切られ、携帯を片手に只呆然と立ち尽くすしかなかった。


「ーーーまさか初日に……とはな。××ッ!!正直ナメてたわ…ゴキブリめ…」
「…そういや、奥さんから問合せ来てたらしいですよ」

国連航空宇宙局、ドイツ支部。
そこで、悪態を吐きながら一人の青年と廊下を歩く、老齢の女性がいた。
『ジェシカ・ベルウッド』。ドイツの科学者であり、医師であり、そして……アドルフに人体実験を施した張本人である。
青年からの報告を聞き、不機嫌そうに顔を歪めた。

「あぁアレか…ケッ!無知で傲慢な弱者めッ!!一生運命に翻弄されてろ!テメーがそんなんだから、コッチは軌道修正が必要んなっちまっただろーが!」
「…でも、随分乱暴に切り捨てましたね…」
「女(ヤツ)が選んだ結果だろう。"あの家に我々の身内は一人もいない"」

歯に衣を着せぬ物言いに、青年は冷や汗をかく。

「君は童貞かねロッカくん?」
「断じて違います」
「そうか。ならばその縁、大切にしたまえ。何故ならーーー」

白衣の懐から煙草の灰皿ケースを取り出しながら、ジェシカは言った。

「"強い男"とは、強い女との信頼関係があって初めて"生まれる"ものださらだ。…クラウディアとの事もあるし、アドルフ君には期待してたんだがな…

…まぁ仕方ない…もう一つの研究に懸けよう」

吸っていた煙草を灰皿に押し付け消した。
クラウディアの名前を出して、ロッカと呼ばれた青年は表情を曇らせる。

「…クラウディアさんは、まだこの事は、」
「何かあったと気付いてる班はいても、まだ確信は無いだろう」
「………大丈夫、でしょうか?」
「あの子も何の覚悟も無しで行ったんじゃないよ。その可能性も覚悟してるさ。まぁ、一つ懸念があるとすりゃ…、

自暴自棄になって、自滅なんて事はあってほしくないね。あの子は大事な検体だ」

淡々と話し、新しい煙草に火を付けるジェシカだったが、悪態を吐いていた先程までとは違い…表情はどこか憂い気だった。


ーーー『バグズ1号』の大きな犠牲と、
それにより明らかになった『火星の地球化計画(テラフォーミング)』への大きな違算ーーー

だが、それらと引き換えに人類は手に入れた。
奇妙にして型破りな進化を遂げた生物の一部分をーーー

後にこれが、『バグズ手術』『M.O.手術』の重要な基礎となるが、その時、その術式を造り出した当時のーーー
人類の最高頭脳の呟いた一言は…、

「これでゴキブリに勝てる」 "では、なかった"



12:Die Sterne, die den Himmel halten.



ーーー人は、天(そら)を見て祈る。

アレックスの言葉を聞き、休憩していた膝丸とヴィルヘルムは実を乗り出し、アレックスに問い掛ける。

「ほ…本当か…?アレックス…」
「あ…あぁ…、五班(ドイツ)のいる方向で何か大きな…爆発…か?良くは見えないが、一瞬何か光ったような…」
「………爆発…」

「ーーーアドルフ…」

「本艦墜落地へ向かってくれ。至急だ」…と、アドルフに指示を出したのはミッシェルだ。その向かう先で、何かが彼等に起こったとすれば、その原因は己の判断ミスの正ではないか。と…ミッシェルは考えていた。
現状、まだ火星に到着して一日も経過していない今、一班と六班からSOSを受けている状態で、この星で残り39日も過ごさなくてはいけない。

状況から考えて、他の乗組員達は絶望的だと感じていた。

「(アドルフ……エヴァ……、…私が……ッ)」
「…信じて、祈りましょう」

俯くミッシェルの隣で、膝丸は言った。

「たとえ火星に神がいなくても、地球にはいる」

ーーー人は、天(そら)を見て祈る。
天(そら)は、死者の世界であり、神のいる世界だからである。

そして、人類(ひと)が"それ"を意識する時ーーー
あらゆる地の教えにおいても、ほぼ例外無く、
高く聳え、天と地を繋げ、祈りを届ける物が、『宇宙樹』や『宇宙軸』と呼ばれ聖性を帯びる。

象徴的なものでは、『搭』や『神木』や『十字架』
広義には、『霊峰』や『龍』や『柱』やーーー

『稲妻』や 『流星』を見て、

人々は想った。
神を、先祖をーーー
時にーーー

仲間を…


「アドルフさんは生きている。ーーーアレックス、死ぬとはなんだ?」

膝丸からの問いに、アレックスは振り返り答える。

「……列車から落ちて犬の餌になる事かなっ。地元(ウチ)の場合」

その言葉に膝丸は小さく笑ったが、ミッシェルは膝丸の質問の意味を理解していない様子だった。

「彼は、敗けない。

たとえ、不意を突かれようと、万が一…裏切りがあろうと。そして、ゴキブリ共が、想定を遥かに越えた進化をしていたとしても…、

ドイツの幹部乗組員(オフィサー)に、犬死にだけは決して無い。
…そう信じたから、彼に本艦(アネックス)を任せた。

ならば俺達は、一班と六班を救助するまで!やる事は、決まっている」

力強く答える膝丸の頭を、ミッシェルは少々乱暴に撫でた。

「ーーーですよね、ミッシェルさん」
「ーーー…ああ…

行くぞ」

停止していた脱出機を動かし始め、第二班は第一班の居る場所へと移動を始めた。

ーーー…一方、第五班のいた場所に、人影があった。
辺りは大きな爆発に見舞われ、景色はがらりと変わり、大きな溝のあった場所は一面平坦になっていた。

そこに、あの頭のテラフォーマーの首が転がっている。身体は爆発に巻き込まれ消滅したのだろう。首から下は綺麗に無くなっていた。
他のテラフォーマー達の姿が無い事から、あの場にいたテラフォーマーは殆ど全滅したとみえる。

「………第五班(ドイツ)……、…………アドルフさん…、………エヴァちゃん……あのコが……

残念だな、可愛い子だったのに」

人影の正体ーーー
頭のテラフォーマーの首を踏みつけ、一人そう呟いたのは、第六班班長、ジョセフ・G・ニュートンだった。
直ぐ近くに第一班の脱出機があり、一人で降りてきたようだ。

コンコンと、軽く爪先で首を踏みつける。

「ふむ……(オッと今の『ふむ』は別に『踏む』とかけている訳じゃないぞ!なんてな…、フムフム。コイツ等なら、最低でも穴掘って逃れるくらいすると思ってたのに、フツーに死んでてビビったけどーーー

成程、内部に損傷があるな。アドルフさんの能力か、さっきの雨で雷でも落ちたか…、どっちにしろ、長くなかったなコイツは)」

不意に乗ってきた脱出機の方に顔を向ける。

「(しかし、何でミッシェルさんは通信返してくんないのかな…

@ミッシェルさんも戦闘中
A一班か三班がピンチなのでそっちを優先
B単に俺の事が嫌い

……緊急事態にわざわざミッシェルさんの部屋の鍵切断してまで颯爽とクスリを届けたのにーーー)

惚れてもおかしくないもんな…Bは無い」

実際は結構きつくミッシェルから邪険にされているのだが、ジョセフ本人はそこの辺りに気付いていなかった。

「……さて、どうする…アタマが死んじゃったぜ。戻って作戦立て直した方が良いんじゃない?」

一体いつから居たのか、ジョセフの周りを大量のテラフォーマー達が取り囲んでいた。
頭のテラフォーマーの援軍なのか、それともジョセフを狙って集まってきたのかは分からないが、先程アドルフ達が相手をしたテラフォーマーの数とそう変わらない人数だ。

「……あっ!それとも"コレ"俺が殺った事になってる?もしかして…、え?そーいうのあんの?仇討ち的な…」

冷や汗をかきながら首を指差し言うジョセフだが、当然返事は返ってこない。

「もーどの道大将死んでんだからさ、大人しく投降しなって。

君達はーーーコイツがいなくなってもまだ、ヴぃジョンは見えているのかい?

それとも…『それでも全力でぶっ殺す』ってやつか?ま…人とゴキブリだもんな(多っ!!やっぱ逃げようかな…)」

内心テラフォーマーの数にうんざりしていたジョセフだったが、笑って大群のテラフォーマー達に向き合った。



ーーーーーーーーーー…
ーーーーー…
ーーー…

「プランδに入ったらしい。最悪だな」

BAR"海豹"の前で待っていたSPの男二人の無線に連絡が入っていた。
火星に向かった乗組員達が、プランδに移行したーーー…という、最悪の事態を表す報告だった。
サングラスを掛けた方のSPの言葉を聞いて、少し驚いた風に聞き返す。

「δって6つにバラけるやつか」
「あぁ」
「最悪って事はアレか…え〜」
「アネックス本艦が襲撃された。研究設備が壊れてるかも知れない」

バンダナを付けた男はチョコバーを食べながら「…マジかよ」と言葉を漏らす。

「今って確かアレだろ、人間にとって害の少ないA・Eウィルスの仲間を見付けに行ってんだろ?"牛の天然痘"みたいな」
「その通り。それが第一目標だ。それが無いならA・Eウィルスのキャリアーと思わしきものを大量にさらって来なければならん」

サングラスを掛けた方のSPの名は『日向強』。バンダナを付けた方のSPの名は『染矢龍大』という。
染矢は日向の話を聞いて眉をひそめた。

「…それが分かんねーんだけどさ、いくら"培養出来ない"っつってもーーー…今地球にあんのと同じウィルスで良かったら、"既にウィルスに冒され死んだ人"の体からは、大量に採れるんじゃねーの?仏様に失礼だからやんねーの?

おい、『アナタウチの子が喋った!』みたいな顔やめろ!」

口をぽかんと開けて、スマホのカメラを向けてきた日向に思わず怒る。

「…スマンスマン、だがそこが変だから皆慌ててんだよ。蛭間さんが言うには…、

"増えない"らしい。地球のウィルスとはかなり違う」

その言葉に驚き、冷や汗を流す染矢。
"ウィルスが増えない"、というのに、何故感染した人が病気になっているのか。それでは辻褄が合わない。

「じゃあ何で感染した人が病気になってんだよ」
「知らねぇっつーの、だからやべぇんだろ!?どのみち今の火星の状態じゃあーーー…各国バラバラで生き残んなきゃなんねぇ上に、研究サンプルはテラフォーマー50匹捕まえたって足りるとは、俺ぁ思えねぇ…!

絶望的だぜ、桜人は」

「……そうかよ?…要は"それを"すりゃあいいんだろ?

ゴキブリも進化したゴキブリも、超進化したゴキブリも、全員泣くまでブン殴ってーーー
蟲籠パンパンになるまでブッ込んで"苔"も火星がハゲる程いただく!そのために行ってんだろ?彼らはッ


強ぇんだろ? 日本(俺等の)代表は!」



ーーー夜となった火星で、日米合同第一班の乗組員達は、昼間のテラフォーマーの襲撃以降、"ぶっ通し"で戦っていた。既に脱出機の蟲籠は一杯になり、これ以上は入らない。

夜であるにも関わらず、彼等の居る一帯は酷く明るかった。何故なら、テラフォーマー達が放った火の手が、第一班の乗組員達を取り囲んでいたからだ。意図的になのか、直接炎で彼等を狙わず、逃がさぬようにか、逃げ場を塞ぐように囲んでいる。
そして、高台から何匹かのテラフォーマーが此方を見下ろしていた。

「ーーー艦長…、敵のあのパワーも、『バグズ手術』ですか」

マルコスの視線の先には、明らかに他の個体とは違う形態のテラフォーマーが、2匹居た。
その内の一匹は、褌のような物を腰回りに履き、身体が異様に大きく発達している上、全身を硬い甲皮で覆っていた。もう一匹は本来のゴキブリ特有の黒光りする甲皮ではなく、全身を白い毛で覆われていた。
そして今、巨漢のテラフォーマーに一人の乗組員が倒され、犠牲になってしまった。

「……いや、"あの虫"の特性は甲皮にある。ガタイは単に食料によるものだろう」
「………"動物性蛋白質"ですか?」
「あぁ、恐らくな」

『バグズ2号』には、食糧として蛋白質の豊富な『カイコガ』が積まれていた。以前乗組員としてバグズ2号に乗り込んでいた小吉は、それを養殖し食べていたのだろうと推測していた。

「俺も好きだったよ。……女性隊員の中には、頑として食わないやつもいたけどな…」
「……じゃあ…"もう一体の方"の出してるあのーーー

あの"糸の特性"はーーー?」

もう一匹の、全身を白い毛で覆われたテラフォーマーの指先からは、糸が伸びていた。
しかし、個体の特徴からいって蜘蛛ではない。どちらかと言うと、その糸の扱い方は、膝丸燈と良く似ていた。

「……………あれも、『カイコガ』だ。

"バグズ手術"。1000mの鋼鉄の糸を紡ぎ出す"蜘蛛糸蚕蛾"の特性」

ヒゥン ヒゥン…と、風を切る音がする。
指先から紡ぎ出した糸を頭程の大きさの岩に繋ぎ、勢いをつけながら宙で投げ回している。

「………ッ、何つー事をする奴等だ………!!それじゃあ艦長の昔の仲間を少なくとも3人も…」

怒るマルコスに対し、制するように手を前に出す。

「…艦長……」
「……近付いて来たら落ち着いて駆除するまでだ。なに……不幸中の幸いっつーのかな

さっきのも……この2体(ふたり)も…、あんま喋った事無い隊員(ひとたち)だったからよ」
「………」

クラウディアからは、小吉が今どのような表情をして居るのかは見えなかった。だが少しだけ、小吉の今の心情が分かっていた。
分かっていたからこそ、何も言わずに只じっと、小吉の背を見つめていた。

「だろ?   ゴリラ」

ゆっくりと、前方からこちらに向かって歩いてくる2体の前に出た。



「行け……小吉……」

重要なのは 遺体(からだ)そのものではないとーーー
生きていれば こそだと

「お前と一郎だけは…生きて…いる……、生きて帰って……そしてーーー…」

俺がーーー

「万が一に、出逢えたらで良い。その時はーーー…」

俺が置いてきてしまった



「(火の手が上がっているのは、狙ったのか偶然かは分からないがーーー…俺等人間は逃げられなくなったな……このまま時間と共に炎上すれば、脱出機も危ねぇ。だが…)」

マルコスの強い懸念は、炎の外側で取り囲む無数のテラフォーマー達だった。何故か、目の前に迫るバグズ手術を受けたであろう個体2体以外、"奴等は炎の内側に入ってこない"。

「(まさか熱いとか火に怯んでいるという事は無い筈。"あの2匹で充分"という"余裕"なのか?)…!、艦長…?」
「既に……21位の開記が犠牲になってしまった。ヤツは危険だ。

下がっていろ」

マルコスに下がるように指示を出し、小吉は巨漢のテラフォーマーの目の前に立つ。テラフォーマーが殴り掛かろうと拳を振り上げたのを見て、マルコスは慌てるが、

拳は小吉に当たることはなく、すれすれのところで空を切った。
間合いに入っていたのは明らかだったが、拳が小吉の眼前に迫ったときには、既に間合いから外れていた。
すかさず、後方に控えていた蚕蛾のテラフォーマーが岩を小吉目掛けて投げ付けるが、それもすれすれでかわされてしまった。大きく身体を動かすこともなく、紙一重で全てかわしている。

『戦場で武道は役に立つのか』
この問いに関しては今尚、議論の余地があるがーーー
"少なくとも" 『武道は戦場で生まれた』という事は疑いようがない。
"彼等には" 彼等には捉えられていなかった。

六段、小町小吉の足の運びが。
段が2つ違うと、もう生物が違う。

ガンッッ!!! 巨漢のテラフォーマーの顔面に拳が打ち込まれた。
だが、先程まで戦っていたテラフォーマーからはしなかった"音"と"手応え"だった。テラフォーマーの顔面には傷一つついておらず、殴られた衝撃で仰け反り、バランスは崩したものの無傷だ。

小吉の掛け声と共に、糸を掴まれた蚕蛾のテラフォーマーは空中に引っ張られる。
バランスを崩して転倒したテラフォーマーを容赦なく踏みつけ、声を荒げながら殴り掛かった。

「おぉおおおッ!!!!!」


都合の良いーーー 夢を見ていた。

リーの能力を見た時から想像はついていた。
"それでも" "ヤツ"は興味を持っていた。
アキちゃんの遺体か、  "その糸に"

だからーーー 彼女の遺体だけは、何か、何か特別扱いされていると…


ーーー空中に投げ出された蚕蛾のテラフォーマーは、糸を飛ばし小吉の首に巻き付けようとするが、気付かれ直ぐに避けられた。
その一瞬の隙を突き、巨漢のテラフォーマーは身体を起こし立ち上がり、蚕蛾のテラフォーマーも小吉の目の前に着地する。


「ちったぁ空気を読みやがれッ!!!」

ドンッ!!という衝撃と共に、2体のテラフォーマーの身体は同時に吹っ飛んだ。
背後で立ち上がった巨漢のテラフォーマーの腹部に拳を打ち込み、蚕蛾のテラフォーマーには肘を打ち込んだのだ。…だが、ダメージは与えられず、硬い甲皮と糸の束で防いだ2体は無傷で立ち上がった。

「フゥーーーッ」と息を整え、立ち上がった2体を前に体制を整えるが、その時、クラウディア、マルコスの二人が巨漢のテラフォーマーの顔面を蹴り飛ばし、鬼塚が脚を殴り付けバランスを崩させ転ばせた。

「………艦長…、何となく…いや全くの勘なんですけどーーー、何となく事情分かりました。そしてコイツの甲皮の前に、艦長の"毒針"はハッキリ言って不利です。
認めて下さい。こォいう大木キャラは、俺等がきっちり翻弄するんで、

艦長は、"そっち"を!」

マルコスの言葉にふぅ…と、クラウディアは息を漏らす。

「女の私もこーいう大木キャラ担当か?」
「いや、クラウディアさんを女と換算していいもんかと」
「良い度胸だ。生き残れたら覚悟しておけ」
「スンマセンッッ!!!」
「ははは…」

青ざめるマルコスに対して苦笑いを浮かべる鬼塚。
そんな二人を一瞥すると、クラウディアは巨漢のテラフォーマーから視線を外し、別方向に進み出た。

「!クラウディアさ、」
「そっちのデカイのはお前達がやれ。私は新手を片付ける」
「新手って……、…!」

マルコスと慶次、そして小吉もその新手の存在に気が付いた。
炎の向こうから、2体のテラフォーマーが此方に向かって飛んできたのだ。勢いをつけてクラウディアの前に着地したのは、膝丸とヴィルヘルムが相手をした飛蝗型のテラフォーマーと同じ個体のもの、そして、"両腕が鎌のように変化"したテラフォーマーだった。

「2体も…!?」
「クラウディア!無理するな!!2体相手はお前でもーーー!!」
「艦長、目の前の相手を先に片付けてから人の心配してください」
「だが…!!」

「ランクで言えばお前等よりは低いが…"闘い方"ならお前等より知ってるつもりだ。こんな時だけ女だからって心配してるんだったらブン殴るぞ。

私も"お前達と同じ戦闘員"だ」

視線をテラフォーマーから外さず言い放つクラウディアに、小吉は諦めたように息を漏らした。だが、その表情はどこか嬉しそうだった。

「……マルコスお前…、歳いくつだっけ?」
「16ッス!ーーーでも9位ッスよ。何スか急に…さっきまで普通に戦闘要員だったでしょ俺」
「……いや…そうじゃねぇよ…。ったく、確かに女も子供もないな。…頼もしいぜ

背(うしろ)は任せた。いくぞ



害虫ども」





12:空を抱いた星たちは