残して寄せて集めて一口で(R-18)/カブミス
※性描写有り※18歳未満の方は読めないでください
カブルーはミスルンを前にした時にある事を思う。こんなに魅力的なご馳走をあえて食べ残す事ができるなんて、悪魔はなんて理性が働くのだろうかと。
迷宮調査から数日振りに帰ってきたミスルンを食事に誘って、店で程よく飲ませてからカブルーは自宅に誘った。家でもう少し飲みませんか、なんて意図が透けて見える言葉に「うん」とだけ答えた恋人に、カブルーはそれだけで舞い上がりそうだった。家に着いて、キスをしながら脱がせあって、二人でベッドに倒れ込む。年上の恋人に頷かれた瞬間からカブルーは自分の言った誘い文句なんて頭から飛んでいってしまっていた。
すぐにキスを深くして、手のひらで彼の体をなぞる。華奢に見えてしっかりした肩、薄いくせに弾力のある胸、細いが確かに筋を感じる腰。食べたいと思った。この人が今日まで懸命に生きてきた全てが、傷跡だらけの肌だってカブルーを魅了してやまなかった。
「ッ、」
押し倒した彼の肌を堪能して、少しずつ手を下へと移動させていく。腹まで触れたところでミスルンの体が一瞬強張り、それからすぐに弛緩した。ミスルンはお腹を触られるのを嫌がる。嫌だけれど、カブルーには許してくれる。それがカブルーを歓喜の渦に蹴落とし、独占欲を満たしてくれるのだ。カブルーはミスルンが好きで、だからミスルンにはこの世の全てを拒絶して、それから全てを許してほしい。自分にだけ、特別に。
「……っカブルー」
「はい。ミスルンさん」
そんな滑稽なことばかり考えてしまうカブルーへ、ミスルンは少し乱れた声で先を促した。そうだ俺には時間が無いのだと思い直して、カブルーはミスルンの後ろの穴へ指を這わせる。欲を誤魔化すように黒い瞳にキスを落として、次に今は何も入っていない右の穴にもキスをする。いつだったか穴の中を覗かせてもらったことがある。この中を舐めたら彼は怒るだろうか。不快でなければさせてくれそうだ。想像だけで心が満たされる気がする。気がするだけで、やはり静到であるわけが無いのだけれど。カブルーはいつでもミスルンを求めて飢えている。
「あ、ぁあ、」
それから唇へもキスをした。ミスルンはキスをしながらだと早く蕩けてしまう気がする。そんな気がするだけで実際には違うかもしれないが、カブルーには確認するだけの余裕なんて無かった。ミスルンを前にすると、カブルーだって頭が蕩けていくのだ。脳味噌がソースみたいに溶けて滴れていって、やっぱりこの人を食べてしまいたいと思った。
痛く無いように傷付けないように。逸る気持ちを抑えて彼を蕩けさせて、それからお伺いをたててやっとカブルーはミスルンと一つになれる。カブルーはミスルンの中へ入る時は正面から抱き合ってすると決めていた。それはミスルンが辛くはないかと確認するためであり、彼の中へ侵入していく様をじっくり観察するためでもある。他の人なら嫌がるだろうが、彼は見られたくないという欲が無いのか特に隠しもせずにいてくれる。
「……ふ、っぁ、うう……」
よく解れた彼の中へゆっくりと自分を埋めていく。入口を先端で押し広げて少しずつ入っていくのを、頬を赤くしたミスルンが震えながら受け入れる。カブルーはあまりの快感に息を詰める彼の唇へキスをして、呼吸をするように促した。この息も全て飲み込んでしまえたら良いのに、なんて考えながら。
「あ、カブルー、」
「ミスルンさん……」
全部入れてやっと安堵することができた。自分より長く生きてきたこの綺麗な人が、自分にだけ許してくれた特別な行為。この後も自分だけに許して欲しい、なんて考えてしまうのは我儘だろうか。執着じゃなくて愛とか恋とかそういう事にしておいてくれないかな。それかいっそ、今ここで壊れるまで犯して全部食べちゃえば良いのかもしれない。
「ああっ、あ、ひっ、ああ……っ」
腰の動きを早くしつつミスルンを観察する。彼の好きなところへ押し当てながら優しくゆすってやると、腹を曝け出して快感を表した。カブルーは逃げそうになる腰を捕まえて引き寄せて、強引にミスルンを膝に乗せた。丁度自分の顔の近くに来た耳へ口を寄せる。耳を舐めるたびにミスルンの肩が震えて、体だけでなく中もぎゅうとカブルーを抱き締めてくれるのが堪らない。この食べかけの耳だって、カブルーは噛みちぎって飲み込みたいのに。舌で味見するばかりでは頭がおかしくなってしまう。もっと快楽に突き落としたら、痛みも与えずに食べられそうだ。
「気持ちいい、ですか?」
「っうん、ンンッ、ア、きもち、い……ぁあっ、カブルー、」
「ハァ、俺も気持ちいいです」
「うん、うんっ」
カブルーはミスルンの絡めた指も、小さい鼻筋も、浮き出た関節だって、全部が好きで全部を食べたい。どんな歯応えと舌触りと喉越しで、貴方はどんな顔をするのか。原の中が貴方が隙間無く詰まったらどんなに心地良いだろう。そんなことを考えながらカブルーはミスルンとセックスをする。
どうして悪魔はこの人を目の前にして、食べ残すなんて事ができたのだろうか。カブルーは心の底から不思議に思う。もし自分がミスルンを食べられる状況にあったとして、それが誰にも見つからずに誰からも咎められずに完食できるのならば、そもそも食べ残すなんて選択肢すら浮かばないだろう。残飯だなんてとんでもない。これ程のご馳走は彼以外には絶対にお目にかかれない。頭から爪先まで全て飲み込んで皿まで舐め回した後に、髪の毛の一本でも食べ残してはいないだろうかと床を探して這いつくばるだろう。それくらいカブルーはミスルンを好きだった。
「……食べちゃいたいくらい好きですよ。ミスルンさん」
「うん、好きにするといい」
「ふふ、ありがとうございます」
どんなに好きで食べたくても、現実にはそんな事はしないし出来ないのだが。相手がどんなに望んでいたとしても。自分にだけ、特別に、許してくれたとしても。
(メランコリーキッチン)
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