キミの為なら死ねる ver.王泥喜



 手紙が来た。

「こんにちは。お久しぶりです姫君。お元気ですか」

 とてつもなく平凡な文句から始まる、あの人の手紙。
 隣国の王子様の法介くんは、なんだか頼りない。でも王子様とは思えないくらい、素直で真面目でかわいい人。
 私たちがまだまだもっと小さかった頃、両国はとても外交が上手く行っていた。それはもう、姫と王子の結婚が約束されるくらいに。
 大人の決めた勝手で傲慢な約束だとは思うけど、法介くんのことは大好きだった。
 いつからだろう。年々、行き来する回数は減らされて。婚約なんてものも気が付いたら消えていて。
 挙句の果てには戦争ですって?


 その件に詳しい家庭教師の話では、どうやら隣国の王は病に伏しているらしく、
 そこを狙ってわが国が攻め打つような形らしい。
 なんて、卑劣な。
 正義感の強い法介くんはどう思っただろう。きっと軽蔑している。
 そう思って、少しだけ勇気を出して手紙の続きに目を落とした。
 私も一国の姫である以上、それを読む義務があるから。





「キミにたくさん、聞きたいことがあります。

 風邪などは引いていませんか。

 ダンスの練習は続けていますか。

 また駄々をこねて家臣たちを困らせていませんか。

 庭園のコスモスは今年も咲きましたか。またキミと見たいな。

 贈った髪飾りは、使ってくれているでしょうか。

 以前会ったときよりも髪が伸びたのでしょうか。

 オレはもう3年前のキミしか思い描けない。

 会いたい。

 キミに会いたい。

 こんどの戦争のことでどれ程心を痛めているかと思うと、

 自分を不甲斐なく思います。

 オレは前線に立ちます。

 そして無意味な戦いを必ず止めます。どんな手を、使っても。

 キミの流す涙を最小限におさえられれば、それでいいのです。

 あ、大事なことを聞き忘れてた。

 オレ以外の男に求婚なんてされていないかな?それが一番の心配です!

 気持ちの重さなら、誰にも負けない自信はあります。だってオレは」




 法介くんのあの力強い声が、聞こえてくるみたいだった。






「オレは、キミの為なら死ねる」




SHORT
式日