誰が為に 5/5



 すべてが終わった。
 銃弾は急所を逃れて命に危険はなかったし、発砲後の一瞬のスキをついて龍一さんと怜侍さんで牙琉を取り押さえてくれたらしい。
 国交を正常に戻すにはまだ少し時間がかかりそうだけれど、それは何の苦でもなかった。
 大丈夫。
 だってみんな生きている。
 私が、護ったんだ。






「姫、お加減いかがですか」

「うん、もうだいぶ元気!いつも遠いところお見舞いありがとうね」

「そんな…オレのせいで姫がこんな目に遭ったっていうのに…」

「悪くないよ、法介くんは」

 法介くんが、私の手をぎゅっと握る。
 いつも温かくて、その上今日は少し汗ばんでいるように感じた。どこか緊張しているような。

「法介くん…?」

「姫、あ、あの!約束覚えていますか!戦争が終わったら、って」

「うん、もちろん」

「結婚、」

「しようよ」

 感極まったのか彼はわああああ!と雄叫びをあげて、私を抱きしめた。

「い、痛っ、そこ傷!」

「わあっ、ごめん!!」

 可愛すぎるよ、法介くん、だいすきだよ。
 法介くんはあらためて優しい手つきで私の肩に手を添え、それを合図に、私は目を閉じた。
 吐息が、近づいて。







 ごつん、と、鈍い音。


「痛ッ…てぇぇぇぇ」

「そーゆーことは国をきちんと立て直してからにしてくれるかな」

 怖いほどの笑顔をたたえてそこに立っていたのは龍一さん。

「あ、あんたそれ花瓶…!殺す気か!」

「惜しいな。もう少し私が早ければこのポットをひっくり返しているところだ」

 そして熱々の紅茶のポットを持った怜侍さん。



 意識が戻ってから、龍一さんにも怜侍さんにもこっぴどく叱られた。
 無茶をするな、貴女は一国の姫なのだ、と。
 いい大人の二人が泣きながら私に説教してくるもんだから、私もびっくりして泣いてしまった。
 その後私を泣かせたことに対してえらい勢いで謝ってくるもんだから、今度は笑ってしまった。

 私にはこんなに想ってくれる人が居て、凄く幸せだと思った。





この先もずっと、護っていたい。

どうかどうか、あなたの笑顔が曇りませんように。

この命絶えるまで。

この命絶えても。





fin.


SHORT
式日