やたぶき屋へ行こう



「それにしても男同士でやたぶき屋ってのも何か悲しいもんがあるよね」

「他にやっている店が無いのだから致し方ないだろう。だいたい、男女で来るものでもあるまい、この店は」

「僕は真宵ちゃんと来るけど」

「貴様と真宵君はそのようなアレなのか?」

「そのようなアレではないけどね」

「だろうな。こんな色気も素っ気もないラーメン屋台に来るなど、男女関係とは言えないな」

「何の話してるんだよ、御剣」

「……数日前に私をこのやたぶき屋に誘った女性が居て、だな」

「うん」

「私のことを…その、す、き。だと。言うのだが」

「……(真宵ちゃんじゃないだろな)」

「言っておくが真宵君ではない」

「あ、そう」

「よく解らん女性なのだ。頭は良いように思うが、どうも節々に私をからかっているようなところがある。というか、平気で私を指差して笑い飛ばしたりする」

「ずいぶん豪傑な女の子がいたもんだね…」

「とにかく扱い難いのだ。振り回されてしまう。ペースを乱される」

「苦手なのか?」

「彼女を相手にしていると、思うように振舞えない自分に苛ついてしまってな。避けていたのだが…食事に誘われてな」

「それが、やたぶき屋だった、と」

「うム。…そこでこのしょっぱい味噌ラーメンを啜りながら、何故か、打ち明けられたのだ。

何かおかしくはないか!この小汚いラーメン屋台だぞ。そこに誘われた時点で期待も何も打ち砕かれたというのに、何故そこで愛の告白をされねばならんのだ!

信じがたい。彼女の言動はムジュンしてると思わんか、成歩堂。全面的に信頼性に欠ける」

「御剣、ラーメン伸びるよ……」





「ごちそうさまでした。…はい、ではここで弁護側が、検察側の主張を整理してみたいと思います」

「うム、」

「御剣検事のそばにはちょっと奇妙な女性がいて、しょっちゅう御剣検事をからかってくる。ここまでは宜しいですか」

「間違いない」

「で、その女性を相手にしていると振り回され、ペースを乱され、なんだか自分らしくいられない御剣検事。アナタは彼女に嫌悪感を持っているのでしょうか?」

「嫌悪ではないが迷惑だと」

「はい、ムジュンー」

「なぬっ!?」

「アナタは先程こうも言いましたね。彼女にやたぶき屋に誘われて、“期待”が打ち砕かれたと…。

迷惑だと言っているが、一方では何かを期待していたのではないですか?」

「それは確かにムジュンと思えるが、私にはそのムジュンの正体が解らん」

「お前どんだけバカなの」

「な!」

「こんなとこで僕とラーメン食ってないで、早くその子に返事しに行けよ」

「何を!」

「だーかーら!自分も好きだって言えよ!」






眩暈とともに駆け出した夜。


それを恋と呼ぶことを、キミに教えてもらうとは思わなかった。





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行こうシリーズwith成歩堂inやたぶき屋。
このシリーズは「付き合い始めの初々しいカップル」という設定だったので、この機会になれそめを書いてみました。



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