08*ご都合主義ここに極まる
返事の返ってこないこのドアを叩くのはもう何度めか。
薄い木のドアはまるで鉛のように閉ざされていた。
「…クルミさん。居るんだろう」
「………」
「ドアを開けて。話をさせてくれないか」
「………」
「何か気に障ること言ったかな。きみに悪いことしたかな」
「………」
「答えてくれないか」
「………」
「ボクは…きみが、好きだ。会えなくても、まだこんなに好きだ、ねぇ─」
「────うるさい。うざい」
「……クルミさん、」
「私は…あなたが、キライなの!!」
「!」
ご都合主義ここに極まる
「ダサいし、偽善的だし、仕事の話ばっかだし、しかもこんな素性のわからない女とヘラヘラ付き合って、本当につまらない最悪の男!ヘドが出るのよ!」
「……確かにボクは、そういう男かも知れないけど。きみに言う権利があるかい?」
「なに、よ」
「きみは嘘吐きだ」
「……!」
「たくさんたくさん嘘を吐いてるじゃないか。お母さんの病気も仕事のことも嘘だらけ」
「っわ、わかってんなら、どーして」
「仕方ないだろ。きみに嫌われたくなかった。好きだからだ。嘘でも必要とされてるならと思って。─それに、」
「意味わかんない、ほんとバカ」
「それにね。きみが今ボクをキライと言ったのも、嘘かも知れないし。あ、前に好きって言ってくれたのは信じてるけど」
「はっ………なんなの、それ、都合良すぎ」
「ポジティブシンキングなんだよね。カカシ先輩には病的だっていわれるんだけどさ。病的ってひどくない?」
「……っ、」
「あっ、今笑った?」
「うるさい」
「クルミさんの笑顔が見たいよ」
「………」
「クルミさん、開けて─」
「ヤマトさんってやっぱりおかしいわ」
音もなく不意に開いたドアの向こう。
鍵なんて最初から掛けていないのにと彼女は呆れた顔で、でも、確かに笑って言った。
式日