だれかときみの物語

ジャミル先輩へ

また勝手にいなくなってしまった私のことを、怒っているでしょうか。
だけど本当は、この旅の間にジャミル先輩と会う気はもともとなかったんです。
ただ、この手紙と日記を残して、いつか私が残した欠片たちに気づいてくれたらいいなって、思っていただけで。

だから、一緒に同封したこの夜の砂漠の写真が、まずひとつめの私の欠片です。
世界中を巡って、私は同じだけ私の欠片を残しました。
そのすべてが、私からジャミル先輩へ向けたラブレターです。

あなたが私の見ているものを綺麗だと言ってくれた日から
私はあなたのためにシャッターを切ってきました。

どれだけ長い時間がかかってもいいから、集めてあげてください。
その日記のページをめくりながら、私の見ている世界を探してください。

いつかジャミル先輩の夢が叶いますように。
そうして、私に愛していると告げなかったことを、少しだけ後悔してくれますように。

そしてその時、どうか私がもうこの世界にはいませんように。
もう戻らない私を思って、愛してたと寂しくなったなら、その時は私の勝ちです。








12月23日

茨の谷に来た。
鬱蒼とした森をセベクの案内で抜けると、立派な王宮が現れる。
どんよりと重い雲はたくさんの雨の粒を溜め込んで、今にも降り出しそう。
名前の通り茨に覆われた王宮の写真は、リリア先輩に預けた。



5月11日

夕焼けの草原に滞在して2週間目。
今日はラギー先輩がスラムを案内してくれた。
少しドキドキしたけれど、子供たちの笑顔はまばゆく、
そんな姿を見守る人たちの姿もまた優しい。
一緒に遊んだ子供たちと写真を撮った。



8月2日

暑いから海に行こうと思って連絡をとった、アズール先輩との約束の日。
待ち合わせの場所に行くと、ジェイド先輩とフロイド先輩もいた。
魔法薬を貰って、珊瑚の海の観光地を巡った。
海の中へ降り注ぐ太陽の光と、パステルカラーの珊瑚。
たくさん写真を撮ったけど、ジャミル先輩はここに来るのは大変かなと少し思った。



10月6日

輝石の国でヴィル先輩に会った。
私がやっていることを聞いて呆れた顔をされた。
だけど、今度ヴィル先輩の主演映画の広告で、写真をまかせてもらえることになった。
それから、明日はジャックに会える。



2月20日

薔薇の王国のトレイ先輩の実家で、リドル先輩、エース、デュースと会うことになっていた。
行ってみたらケイト先輩も来てくれていて驚いた。
トレイ先輩のケーキは、さらに美味しくなっていて、つい3つも食べてしまった。
可愛らしいケーキの写真は、お店に飾ってもらえることになった。



4月30日

新緑の芽吹く季節だと思って、エペルくんに会いに行った。
突然の訪問だったにも関わらず、
あたたかく迎えてくれた村の人たちはとても優しかった。
緑の茂る写真を撮った。



6月28日

嘆きの島に来た。
湿度の高い空気を感じながらイデア先輩のおうちを訪ねる。
変わりない様子に安心しながら、
オルトくんも一緒にゲームをしたり映画を見た。
来る途中の舟で撮った水平線の写真を褒めてくれたからそれを預けることにした。


7月7日

学園に遊びに来た。
ちょうど星送りの時期だったので、そのまま見せてもらうことにした。
今年も色々あって大変だったみたいだけど、
そんなこと感じさせないくらいに綺麗だった。
写真は学園長に渡した。
いつかきっとジャミル先輩が取りに来るからと言ったら、
楽しみにしていると笑っていた。







○ ○ ○


back : silent film