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Xに上げたお話です(2024/04/05)。
話の都合上夢主の誕生日が3/5です。
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   クロト0.03

 四月五日。免許更新期限最終日の午後、ぎりぎりで駆け込んだ免許センターの同じ講習部屋に土方さんがいた。ゴールド免許なことに驚いたら「警察なんだから当たり前だ」と言っていたけれど、土方さんが言うとたやすく違反を揉み消せるという意味にも聞こえる。そういえば土方さんはいつもパトカーの助手席に座っていて、運転しているところをほとんど見たことがない。
「誕生日いつなんですか?」
 免許更新が被るのだから近いのだろうと尋ねてみると、何がまずいのか土方さんは少し言い淀み、そして観念したように五月五日だと言った。それが土方さんのイメージとあまりに違っていたから思わず笑ってしまって、ああ、きっと皆からこんな反応をされるから言いたくなかったんだと思った。
 そうしてひとしきり笑ったあと、はたと気がついた。三月五日生まれの私と五月五日生まれの土方さん、免許更新期間が被っているのは今日一日だけ。それで同じ時間帯の講習部屋になるのって、一体どれくらいの確率なんだろう。

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 午後予定していた警察庁への登庁がなくなり急に予定が空いた。内勤作業がないこともなかったが、行けるうちにと免許更新に行くと見知った顔と鉢合わせた。そいつは会うなり俺のゴールド免許に驚いたり誕生日を知って笑ったり、どうにも遠慮がない。
 そういうお前はいつなんだと尋ねれば、三月五日だと言う。更新期間の初日と最終日、被るなんてすごい確率ですね、などと言っているが、そもそも知り合いとたまたま同じ講習になる時点でかなり奇跡的なのだ。同じ誕生日でも免許更新の日付が被る確率は二パーセントにも満たないのだから。
「このあと暇か?」
 免許証交付の待ち時間に訊けば頷いたので、
「過ぎちまったけど、誕生日祝いしてやるよ」
 そう言うと、真ん中バースデー祝いにしましょう、と返されたものだから俺は思わずきょとんとしてしまった。まだ誕生日を迎えていない自分が祝われる発想がなかったのだ。そんな俺を見て、彼女は誕生日を知ったとき以上に笑っていた。