01.


母は病床にあっても美しい人だった。私は結局、母が亡くなる最期まで彼女の痛みや苦しむ姿をついぞ見ることはなかった。涙ぐむ私の目元を撫でる優しい指先、暖かな微笑み、いつもと変わらない軽やかな声音で私を励ます。

「シルバが貴女を迎えに来るわ。だから泣かないで待っているのよ」

そして母は、生まれてから一度も会ったことのない父に私を託した。
- 1 -

*前次#