もしも、双子だったら(月島)





私には兄が二人いる。6歳上の兄と、同じ日に生まれ、たった数分しか違わない兄だ。つい最近この二人の長い長い冷戦状態が解消された。

「長かったね、冷戦状態」
「余計なこと言わないの」
「本当のことじゃん。ね?蛍」
「…うるさい」
「図星だからってすぐそうやって言うの止めてもらえます?」
「…本当うるさい」
「ほら、二人とも食べるんだろ?ケーキ。喧嘩してないで好きなの選んで」

わーい!と喜びながら箱を覗く。中にはそれぞれの好きな味のケーキが入っていて、選ぶ必要も無く、お互いに目当てのケーキを手に取った。蛍はショートケーキで自分はフルーツタルトだ。そして、思う。間違いなく一番上の兄は自分たちに甘いと。

「決勝って白鳥沢とだっけ」
「そう」
「超高校級エースがいるとこ」
「よくご存知で」
「テレビでやってた」
「ふーん」
「止められそ?」
「僕が?無理に決まってるデショ」

無理に決まってるなんて言ってはいるが、あの顔は何本か止めてやる!と思ってる顔だ。堂々といつもみたいにムカつく顔で止めるけど?とか言えばいいのに、と思いながら口に広がる爽やかな味に酔いしれる。そして、蛍はケーキを買ってきてくれた兄に明日は来なくていいから、と言い放ち自室に戻っていった。

「藍、明日の予定は?」
「特にないけど」
「よし!行くぞ!試合!」
「来なくていいって言われてなかった?」
「バレなきゃ大丈夫!」
「……お兄ちゃんデカいからすぐバレると思うけど」
「大丈夫、大丈夫!」

翌日。あんなに大丈夫だと豪語していた兄は、秒で見つかり睨まれていた。ほらね、すぐバレるって言ったデショ。まあ、試合が始まればそんなこと気にもしないはずだ。あの超高校級エースの攻略法で頭がいっぱいになるのだから。アップが終わり、スターティングメンバーが紹介され、蛍がコートに入る。