前の通話から、リオルはシロナさんが来ることで自分がここから離れる事になるということを理解して、それの反抗の為に攻撃を仕掛けたのだろうかと私は思っていた。
けれど、彼女のルカリオはボールの中で私達の話を聞いて、それをリオルに伝えたはずだ。だから、シロナさんがリオルを連れて行くという事がないと、そう分かってるはずなのになぜバトルをするのか。
戸惑う私にリオルはばうばうと久々に声をかけて、びしりとルカリオを指さすように手を向ける。
その仕草に、まさか、と、シロナさんは楽しいことが始まる前の子供のように目を輝かせ、にっと笑う。

「リオル、もしかしてあなたに指示を出して欲しいんじゃないかしら」
「えっ?そうなの?」

彼女の言葉にこくりと頷くリオルに、私バトルしたことないし、貴方の使う技ちゃんと知らないけど……と、声を零せばそれでも構わないと言うように手を握られ、信じて欲しいと、大きな瞳で訴えかけられる。

「いいじゃない、貴方私のルカリオがリオルの時から見てるんだし、大体の技は分かるでしょ?
それに、レベル差がかなりあるし、私はルカリオに〈はっけい〉しか指示を出さないから」

やるからには真剣にバトルするけどね!、そういうシロナさんを見て、そしてやる気満々のリオルとルカリオをみて、どうなっても知らないからね……と、頷くのだった。


私はほんとにバトルが初めてだ。
人のものやポケモン達がしているのを観察をしたりして、どんな風に技を出すのか、戦略はどんなものなのか、それだけを考察するが、実際バトルをするとなれば視点がまるっと変わる。
ポケモンに指示を出す。
それは彼等の身体が傷つく責任を負うということと同義だ。
論文の発表の時のように、緊張で汗ばむ手を拭い、〈はっけい〉を使えるリオルが覚える技について思い浮かべる。

いつの間にか、私たちの周りにはポケモンたちのが集まっていた。屋根の上にとまるドンカラスたちや、草むらから様子を見てくるロズレイド達に、シロナさんはこんな風にポケモンに見られてやるのなんて初めてだわ!と興奮したように声を上げる。
そんな中、フーディンがフィールドの外側の、丁度真ん中の所に立つ。

「フーディン、開始の合図お願いね」

私の言葉にこくりと頷くフーディン。その向こう側で大きくシロナさんが手を振った。

「クフィナ!リオルー!楽しいバトルにしましょー!!!」

自分の主人の盛り上がり用に、ルカリオはクールにため息を吐くとぐるると喉を鳴らす。
彼女のその様子に、リオルは驚きつつも、好戦的に拳を構える。
私はただお手柔らかにねー!と大声で声をかけ、そしてそれの一泊後、フーディンによる合図が上がったのだった。