貴方に触れる許可をください。
跪かれて、見つめられながらそんなことを言われてしまえば、ユーリは熱に浮かされたような心地でこくんと頷いた。
コンラッドは銀を散らした瞳を細め、そしてゆっくりとユーリに顔を近づけてその唇に触れた。―――コンラッドの顔が近づいてくる間、その顔の良さにぼうっとしてしまい、目を閉じるのを忘れていた。
直前で、どのタイミングで目を閉じるのか、何秒くらいするものなの、どうキスを受けたらよいのか。頭がわーっとなったユーリは咄嗟にコンラッドに待ったをかけた。
「ねえ、こういう時って目をつむるもの?」
と恋愛初心者丸出しの質問を今にもキスをしそうな距離にいるコンラッドへ投げる。雰囲気も色気もあったもんじゃない。
けれど、ここで馬鹿にしたり萎えたりせず、そんなところも本当に可愛いなと思うコンラッドは、ユーリに対してどこまでも盲目的だった。
「ユーリのやりやすい方でいいですよ」
と瞼の上に口付ける。
人は目にものが近づくと反射的に目を閉じる。そしてコンラッドは、目を瞑ったユーリと初めてのキスを交わした。
触れるだけの軽い口付けだった。けれど、それだけでユーリは顔を真っ赤にして、今起きたことは夢なんじゃないかと思っているような素振りだった。
「……ユーリ」
2回目のキスをしてもよいかコンラッドは名前を呼んで問うた。ユーリを驚かせないための確認で、コンラッドは段階を踏んで慣らして自然にキスができるようになるまで持ち込みたいと考えていた。彼はユーリを大切にしながら、それと気づかれないように主導権を握って彼女の可愛さを存分に愛でたいと考えていた。あいつってそういあとこあるよねーとは幼馴染の評だ。
「好きですよ」
互いの吐息を感じる距離で、優しく囁く。
「…う、うん。わたしも好き…」
どきどきと緊張が収まらないのか、胸にぎゅっと手を当てている。
なぜこのタイミングでまた告白?と心中で首を傾げたユーリ。再びキスをされそうになって、コンラッドに待ったをかけた。
「ユーリ?」
「い、いきなり来られると心の準備が間に合わない…です」
つまり。触れるなら許可を取れと。コンラッドはそう解釈した。
「……では、二度目のキスをしても?」
おずおずと小さく頷いたユーリの唇に、今度は少し長く口付ける。柔らかな感触を楽しむように何度も角度を変えて啄むうちに、次第にお互い舌先を出して絡ませるようになった。
きつく閉じられたままの目尻に涙が滲むのが見え、コンラッドは名残惜しげにそっと離れた。
「……、終わり?」
潤んだ瞳で上目遣いに見上げられ、
「続きはまた今度」
と、額同士を合わせて言うと、恥ずかしかったのか俯いて頬を染める様子に、コンラッドは眦を溶かした。
「それとも、まだしたいですか?」
俺は全然構いませんが。
余裕の面持ちのコンラッドに対して、ユーリは「もう満足です」と返すのでいっぱいいっぱいだった。
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