中間テストの一日目が終わって昼までの今日、名前と一緒に帰る約束をしていた。
普段は部活があって一緒に帰ることもできないし、そもそも俺は寮生活な訳で。名前が制服で一緒に下校するのが夢だとかなんとか可愛いわがままを言うもんだから、ついつい部活の無いときならいいよと言ったら『じゃぁ、テスト期間一緒に帰ろう』と満面の笑みで言われたのだ。

クラス下駄箱のところで待ち合わせをしていて、上履きから靴に履き替えた。

「亮介くんはどうだったテスト?」
「名前よりはやれてると思うよ」
「ヒドイ!!結構頑張ったんだけどなー。それより明日の英語は死んだ、もう無理だ」
「馬鹿言ってないで、さっさと帰って勉強しなよ」

一緒に帰るという名目だけど、俺は送ってまた寮に戻るだけだ。名前が自転車通学なので自転車置き場から出て、彼女の帰路についた。
しばらく歩いてから名前が『二人乗りはあこがれなんだよねー』とこれ見よがしに言い出すからため息を1つ吐いてから名前の自転車に乗った。
「え、名前が運転じゃなくて?」
「普通彼女が後ろでしょ?」
よっこいしょ、と言いながら名前のママチャリの荷台に名前が腰掛けた。
「普通前向きじゃ無いの?」
「背中合わせで乗る方が楽しいもん」
そう言って名前が俺の背中にもたれ掛かってきた。
背中合わせで自転車二人乗りなんてしたことない。そのまま漕ぎ始めると名前が鼻歌を歌い出した。上機嫌になると鼻歌を歌うのは名前の癖だ。

しばらく経って名前の家の近くの公園まで来ると、急に押し出される感じがして着地する音がした。
「亮介くん四つ葉探そう!」
「お前ほんと自由すぎ」
「そう言いながらちゃんと付き合ってくれるくせに」
笑いながら名前が言う。その通りだ。彼女の自転車を公園の隅っこに駐めてシロツメクサの咲いたところへ足を向けた。俺が自転車を駐めている間に名前はしゃがみ込んで四つ葉を探していた。
「四つ葉先に見つけた人が次回アイス奢ってもらえる権ゲットね!」
そう言いながら必死に探す名前を横目で見ながら、目の前のシロツメクサから四つ葉を見つけるべく屈み込んだ。

「なーーーーーい!もう、絶対あると思ったのに!」
「そろそろ帰って明日の勉強するしかないね。四つ葉に頼ってもテストでいい点は取れないし」
「亮介くんソレ辛辣すぎます。泣きそう」
「はいはい、もう十分探したでしょ。また明日探せばいいから」
「はーい」
小さい子どもみたいな返事をして名前が立ち上がった。かれこれ30分くらいは探しただろうか。
結局、名前もだけど俺も四つ葉を見つけることができなかった。

公園から名前の家は本当に近くて、自転車を押して向かった。
「亮介くん送ってくれてありがとね」
「どういたしまして。明日のテスト頑張りなよ」
「うん。また明日ね」
「また明日」
バイバイと元気よく手を振る名前の姿を見ながら、俺は帰路についた。俺にとって遠回りの帰路だった。

もう寮の近くというところで、ふと一塊だけシロツメクサが咲いているところがあったから何気なく見ると、四つ葉が目に飛び込んできた。さっき名前と一緒に探していた時には30分掛けても見つからなかったのに、今本当にぱっと四つ葉が目についた。
屈み込んで写真を撮ってメッセージに添付する。メッセージの内容は【アイス奢ってくれるよね?】と送った。

寮に着くとちょうどメッセージ受信の音が鳴った。
【亮介くんずるい!】
泣いてる絵文字まで付いていて、ちょっと優越感に浸ってしまう。
【写真送ったから四つ葉の効果あるでしょ、きっと】
【…あるかも!ありがとね】
すぐに既読が付いてメッセージが帰ってきた。
【俺も寮着いたから勉強する。名前も明日のテスト対策やりなよ】
【やってるよ。もう英語捨てたから完璧】
ピースの絵文字にため息が出た。英語捨てるな。もう三年生だから、通知表やら内申書に響くだろう。潔いのやら楽観的なのかは分からないけど名前らしいといえば名前らしい。

きっとそういうところに惹かれたと思う。彼女が笑うところ、開き直るところ、わがままを言うところ、ちょっと子どもっぽいところ。全部好きだと思う。名前には言わないけれど。
英語のテストのヤマだけは教えてあげようかなと思いつつも名前が平均点を下回らないようにするよりも、お仕置きした方が楽しそうだなと考えてから俺は英語の教科書とノートを開いた。






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