甘えん坊は忙しい
「ニフラー!また私のリングをお腹にしまったでしょ!」

ニュートから貰った大切なウェディングリングが薬指から抜き取られていたに気づいた私が怒っていると知ったニフラーはフガフガと鳴きながら逃げ回る。
本当にニフラーの逃げ足の速い。だがしかし、幾度となくお前を捕まえてきたのはニュートの次に私なのである。そう簡単に逃がしはしない。
あらゆる隙間を掻い潜り逃げるニフラーは決まって次にソファーの上に逃げるのだ。チラリとニフラーがこちらを確認した隙に私はニフラーのお腹を掴んで抱っこする。

「捕まえたー!ほら出してー!」

ニフラーは擽らなくてもすぐにお腹を漁って私のお目当ての品を差し出してくる。いつもは嫌がるのに何故かリングを隠す時だけはニフラーは素直なのだ。
いいこいいこと撫でてからくちばしに軽い口付けをすると嬉しそうに頬をすり寄せてくれるのでついつい甘やかしてしまう。一生懸命私の薬指にリングをつけ直してくれる姿を見たらもう大変。私はニフラーにメロメロになってしまう。

「ありがとニフラー!なんだかニフラーと結婚したみたいね!」

嬉しそうに鳴くニフラーにもう一度キスをおくりソファに座って二フラーとイチャついていると薬の調合をすると言って部屋に篭もっていたニュートがリビングに降りてくる。労りの言葉を述べると嬉しそうに微笑んでくれたのに私の腕の中にいたニフラーにはちょっと不貞腐れた顔で

「ニフラー、次は僕の番だよ、変わって?」

といい、私からニフラーを引き剥がした。ああ、私のモフモフが!
不満そうなニフラーと私のことなんて知らんぷりでニュートは私の隣に腰を下ろす。

「もう!ニフラーと遊んでたのに!」
「...ねえ、なまえ。僕もお仕事頑張ったんだけど」
「...うん?お疲れ様?ちょっと早いけどティータイムにする?」

ちょっと、いやかなりご機嫌ナナメなご様子のニュートは子供のように拗ね始めた。何が不満なのかよく分からない。もしかして動物たちがまた何かやらかしてた?この前ははしゃいだムーンカーフ達に揉みくちゃにされて最終的には胴上げのような状態にされて連れていかれていたし、そのまた前はピケットたちポートラックルズの喧嘩に巻き込まれていた。
でも動物たちに何かされてニュートが機嫌を悪くすることはないし、怪我とかだったらもっと慌ててるはずだ。
考えても愛しき旦那様の不機嫌な理由は思いつかず途方に暮れているとニュートが呟く。

「ニフラーにはいいこってキスしてたのに僕にはないの?」
「え、キス?」

子供のように拗ねた顔でジリジリと近づいてくるニュート。私はついニュートが近づくにつれて後ろに下がってしまうが、そんなに大きくないソファではすぐに肘掛にぶつかってしまいニュートとの距離が数センチになってしまう。

「え、ニュートさん?見てたの?いやでもほら、ニュートとニフラーは違うといいますか、あの、すごく近いんだけど」
「もう黙って」

うるさい、とでもいうかのような荒々しいキスの後に、啄むようなキスが何度も降り注ぐ。きっとアッシュワインダーの瞳よりも赤く染っているに違いない私の事なんてお構いなしにだ。
するりとニュートの指が私の頬を撫でて、軽い痛みとともに首すじに赤い印を残される。

「ひゃっ、ニュート、やめ、」
「やめない。言ったろ?次は僕がキミに構ってもらう番だって」

まるで子供のような言い方。でもニュートの顔はれっきとした男の人の顔で、なんだかいつも以上に恥ずかしくなる。

「キミは僕の奥さんなのに...」

キスの雨を降らすのをやめたかと思うと今度は私の胸に顔を埋めてそう呟いた。
なるほど、不機嫌だった原因がようやく分かった。

「ニフラーにヤキモチ妬いてたの?」
「...そうだよ」

耳まで真っ赤に染めたニュートはきっと私とおそろいの顔だ。

「私の大切な旦那様は貴方だけよ、ニュート」

可愛らしいヤキモチを妬いてくれた旦那様に普段は滅多にしない私からのキスを送ると、今度は首まで赤くしながらふかふかのニフラーのお腹に顔を埋めていた。



────甘えん坊たちは、大好きな貴方の気を引くので忙しいのです。
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