ポップとファンシーは趣味じゃない

ミヤは後悔していた。全ては私の判断ミスが引き起こしたことで、自業自得だと言われてしまえば言い返せない。
"あの"ジェイド・リーチの押しに負け、勝手にしてくださいと全てを任せてしまったのが間違いだった。
こんなことになるとは思わなかった。イベント事に参加したいとは言った。それが私の願いだった。
けれど、こんな形での参加になると1ミリでも考えられる頭と余裕があったら、絶対に頼んだりしなかったのにしてやられた。

「皆さん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。本日はお日柄もよく…」
「そういうの必要ですか?」
「ふふふ、せっかくなので開会の挨拶らしいことを言ってみたかったのですが」
「もう開会しないでやめましょう」
「そんな…僕、あなたのために色んな人に声を掛けたりして頑張ったんですよ?」
「自分のためでしょ、嘘つき」
「嘘つきだなんて…半分は本当です」
「自分が楽しみたいだけでは?」
「ふふ、楽しみましょうね」

憎たらしい綺麗な笑みを浮かべたジェイドが再び皆に向き直ると、ルールの確認をし始めた。
そのルールというのが細かい。事前に作戦を練る時間を与えるため、ジェイドはルールを印刷した用紙数枚を配っていた。
ジェイドが自分の企画した催しに対する力の入れ様を見るに、かなり楽しみにしているかがわかる。
催しを希望したミヤ本人は乗り気でない。
その理由は配られた紙にプリントされているチーム分けを見ると明らかだった。





スノーボールファイト   
   -氷の竪琴は誰の手に⁉-

にちじ:今月の第三日曜日
    午後1時30分〜(集合は30分前に)
ばしょ:オンボロ寮

Q.SBFスノーボールファイトってなに?
A. 北国に伝わる冬の大会。2チームに分かれて雪玉を投げ合う競技だよ。
Q.どうやってチーム分けするの?
A.戦力が偏らないように配慮しながらクジで事前にチーム分けしてあるよ。
Q.ルールなんて知らないんだけど
A.詳しいルール説明は次のページをよく読んでね。チーム分けも載せているから、当日までに作戦を練っておくのもいいかも。

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雪男チーム
ジェイド、フロイド、リドル 、カリム、ジャック
村人チーム
ユウ、アズール、ラギー、ケイト、ジャミル
氷の竪琴
ミヤ

ルール※公式ルールとは異なります
○2チームに分かれて3分間の間に敵陣のフラッグを奪うか、または試合終了時に残っている人数の多い方が勝ち。
○雪玉は90個までで試合開始前に作らなければならず、魔法で雪玉を作っても良い。ただ、試合中に雪玉を作るとアウトになる。
○魔法の使用は、雪玉作成時のみ使用が可能。それ以外で使用した場合はアウト。
○敵の玉が当たればアウト。味方の投げた玉や自分の手を離れた玉が当たってもアウト。
○3セット行い2勝したチームの勝ちになり、氷の竪琴を獲得することになります。

※次のページにフォーメーションの例を載せていますので、どうぞ参考にしてください。

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なにこれ。と全員がこの紙を受け取った時に思っただろう。いや、カリムだけは賑やかで楽しそうだと思ったかもしれない。
ポップな書体、雪だるまや雪うさぎ、散りばめられた雪の結晶などの可愛らしいイラスト。
街のイベント広告をイメージして、ジェイドは全力で3枚に渡る用紙を作成したのだ。本人は大変満足であったが、当然不満なのはミヤである。

氷の竪琴という雪合戦に参加しない、何をするのかも判らないものに割り振られてジェイドに文句を言いにいった。
その時の返答は「ミヤさんは参加したいとしか仰らなかったじゃないですか」と。
当然、チーム分けの変更を申し出たが「僕に一任しておいて今更口を出そうなんて虫が良すぎませんか」と言われてしまっては、ミヤにはどうすることもできなかった。

「ルール説明は以上です。それではフィールドに案内します」
「どこか移動するのか?」
「寮の横に見えてるのがフィールドだろ」
「この雪の壁がシェルターか」
「人一人隠れるのがやっとっていう大きさだね」
「これじゃ隠れ切れないじゃん」
「事前に調べた通りのフィールドです」
「それにしても寒いっスね」
「たとえ遊びだろうが絶対勝つぜ」
「絶対負けられない!」
「………はぁ」

32m× 8mの長方形のフィールド上に、雪の壁シェルターがセンターライン上に一つと、それを点対象に三つずつ両サイドに立っている。中央からセンター、第1、第2シェルターだ。
シェルターの大きさは170cmの人が屈んですっぽり隠れるくらいの大きさで、あまり大きくはない。
センターシェルターのみ幅が倍の大きさで、これを境に自陣と敵陣に分かれている。
雪玉を入れるケース前のシェルター(シャトー)から4m離れた場所に、紫色と橙色のフラッグがそれぞれ刺さっている。
紫色が雪男チームで、橙色が村人チームだ。これを先に奪った方が勝つ。

チームが分かりやすいように、フラッグの色と同じ色の腕章が参加者全員に渡された。それぞれが防寒具の上から腕章をつけたのを確認すると、ジェイドから審判を頼まれたミヤが雪玉を作るよう号令をだした。
作成時間は2分間。その間に作戦会議も済ませなければならない。
両チーム分かれて、雪玉を作り出す。
文句も言わずにみんな従ってくれるのが不気味で、この学園の生徒ってこんなに素直だったっけ?とミヤは首を傾げた。