試合開始のホイッスルが鳴る。
今から3分間、雪玉を投げ相手を牽制、攻撃しながら先にシャトー前のフラッグを取るか、相手の人数を減らした方が勝つ。
雪玉を持った両チーム数名が走り出す。雪玉を投げ、相手を牽制しながらシェルターに飛び込んだ。
村人チームは、センターに一つだけあるセンターシェルターの裏にラギー、第1シェルターにケイト、第2シェルターにジャミルとユウ、シャトーにアズールというバランスの良いフォーメーションだ。
雪男チームは、センターシェルターに人はおらず、第1シェルターにジャック、第2シェルターにカリムとフロイド、シャトーにジェイドとリドルがいる迎撃型のフォーメーションをとっている。
「いいですか!最初の作戦通りに動いてくださいね!」
「「おっけー/了解ッス」」
アズールがジャミルとユウのいるシェルターへ雪玉を転がしながら号令を出した。
ラギーは動体視力も良ければ耳も良い。自分がいるセンターシェルターの裏に誰も居ないのは分かっていた。
ちらっと顔を覗かせたケイトはラギーの合図に小さく頷くとシェルターから飛び出し、センターシェルターの影に滑り込んだ。
ラギーと同じく耳がいいジャックは、センターシェルターに二人隠れていると気付き持っていた雪玉を山なりに放る。
センターシェルターの裏にいる二人の頭上に雪玉が落ちてくる。僅かにラギー寄りに落ちてくる雪玉を避けるように人一人分シェルターから離れた。
それを皮切りに次々と二人の頭上に雪玉が降ってくる。たまらずケイトもシェルターから少し離れると、ラギーと二人で降り注ぐ雪玉に向かって持っていた雪玉をぶつけていく。
抱えていた雪玉が減っていく。それは両者同じだ。
「今のうちに俺は第1、君はセンターへ雪玉を運んでくれ」
「わかりました」
集中的にセンターが狙われている間に村人チームが両腕に抱えた雪玉をシェルターまで運ぶ。それと同じタイミングでカリムとフロイドがジャックへ向けて雪玉を転がした。
補給を受けたラギーとケイトはシェルターから飛び出して、ラギーが第2シェルター、ケイトが第1シェルターへ走る。
ジャックの雪玉がラギーに向かって飛ぶが俊敏なラギーには当たらない。その隙にケイトが山なりに放った雪玉が第1シェルターの向こうに入っていく。
「ケイトさん!もっと奥ッス!」
「わっ!ラギーくん危ない!」
「うおわっ」
「敵はウニちゃんだけじゃないんだからさ〜」
「余所見は良くないぜ!」
間一髪、フロイドが投げた雪玉はラギーに当たらなかったが、腕からこぼれ落ちた雪玉がラギーの爪先に落ちた。
ピピー!
ホイッスルが鳴って全員の動きが止まる。音は、ミヤが首から下げている笛から出たものだが、彼女が笛を吹いたわけではない。
「たぶん、ラギーくんがこぼした雪玉が足に当たったんだと思う。ので、ラギーくんはフィールドから出てください」
「いや、たぶんってなんスか。当たってないッスよ」
「笛が鳴ったので間違い無いですよ」
「ジェイドくんまで何言ってるんスか?そこからじゃ見えないでしょ」
半数が、雪玉が落ちたのを見たが当たったかどうかまでは分からなかった。では、なぜ笛が鳴ったのか。
これはただの笛ではなく、ミヤがこのイベント用に作った魔法の笛だからである。
「ミヤはすごいな。この短期間であの複雑な条件付けと、限定的な動作をする魔法道具を作ってしまうなんて」
「リドルくんが分かりやすく教えてくれたおかげだよ」
「やり遂げたのはキミだ。もっと誇ってもいいんじゃないかい」
「ふふ、ありがと」
ピピー!
再び笛が鳴る。雪玉が当たった選手がまだフィールド内にいるからだ。ラギーは仕方なくフィールド外に出ると、ピー!っと笛が鳴り止まっていたタイムが動き出した。試合再開である。
ラギーがミヤの隣にとぼとぼ歩いてくると「なんでそんな面倒くい物を作ろうと思ったんスか」と問いかける。
そもそも魔法石を持っていないミヤが魔法道具を作れたのは、カリムのおかげであった。
リドルと勉強した次の日に購買部で魔法石についてサムと話しているところに、カリムがジャミルを連れてインクを買いに来た。カリムが顔見知りのミヤに話しかけようと近付くと魔法石を宝石で代用する話が聞こえて来た。
カリムはミヤに「宝石が欲しいのか?」と徐にポケットからルビーを取り出し、ミヤに差し出した。面食らうミヤに授業で作ったけれど、必要ないからあげるというカリム。ミヤは本当にいいのかと戸惑いながらも受け取った。
そのままカリムはインクを購入して呆れ顔のジャミルと一緒に帰っていった。
呆然としているミヤにサムは、それ一つで小さい魔法石が3つは買えると売り込む。ミヤは少し悩んだが、カリムの"キャンディをひとつ分けてあげる"ような何でもない顔を思い出して魔法石3つを入手し端数をマドルで受け取った。
棚からぼた餅的展開に胸をそわそわさせていると、まるで、それを知っていたかのようにジェイドから頼まれた。
ジェイドは偶然、その日図書館でリドルとミヤの会話を聞いていて知っていた。ミヤが条件付けをした魔法道具を作りたがっていることを。それをネタに頼まれたミヤはジェイドの頼みを引き受けたのだ。
もし、完成していなければこのお遊びは開催されなかったのかなとピピーと再び音を鳴らした笛を見ながら思った。