我らは烏合の衆!竪琴を奪いに来た!!

3分という時間制限のある中でラギーが抜けた穴は大きかった。フラッグを狙うより人数を減らす作戦に変更し、ケイト、ジャミル、ユウで雪玉を投げるも雪男チームの人数を減らす事はできず、1セット目は雪男チームに軍配が上がった。
ミヤは、ラギーと話している間に終わってしまった試合を見て、私って必要無いんじゃないかと改めて思った。
これから5分の休憩を挟んで、雪玉を作ったら試合再開するようだ。雪玉は魔法でちゃちゃっと作れるから、ミヤはちょっと出かけてこようと思った。

「ジェイドさん、ジェイドさん」
「なんですかミヤさん」
「ちょっと購買部にお買い物行って来ます」
「困りますね…あなたがいなくなっては誰がジャッジするんですか?」
「どうせホイッスル鳴りますし、セルフジャッジでよくないですか?」
「え〜なになにイセエビちゃんどっか行くの〜?オレも行く〜」
「購買部ですよ、何か買って来ましょうか?」
「別に欲しいもんないからいーや」

それじゃあ行ってきますとフロイド達に手を振ってミヤはてくてくと寮の門へと歩いて行く。購買部とは言ったが、目的地に購買部を含むだけで他にも寄り道をする予定である。
その道中、よく見る二人組を見かけた。エースとデュースがグリムを連れて歩いている。声を掛けると、どうやらオンボロ寮に来る途中だったようだ。雪合戦のことは知っていたようで、様子だけ見に来ようとしていたらしい。

「行く前にお菓子でも買ってこーぜ」
「私も一緒に行く」
「ミヤは参加しなかったのか?」
「今は休憩中!」

グリムが寒いから早く行こうと急かすのにつられて購買部へ向かう。店内は暖かく、体が冷えていたんだなとサムの声を聞きながら軽く鼻をすすった。
棚の上が見えないと騒ぐグリムを抱っこしながら、ミヤが甘いものは無いかと店内を物色していると、扉が開いて外の冷たい空気が入ってくる。入り口に寮服を着たトレイが立っていた。
エースたちも気付いたようで声を掛けている。ミヤも近寄って声を掛けると不思議そうな顔をされる。

「今日は確かリドル達とスノーボールファイトする日じゃなかったか?」
「休憩中…というか、抜けてきました。暇なので」
「つか、寒いのに良くやるねー」
「そうだ!エースたちもやらない?」
「おいおい、話聞いてたか?」

見てるだけじゃつまらないなら、参加すればいいじゃない!という話である。

「トレイさん、これからのご予定は?」
「俺は今からタルトを焼くつもりで、足りなくなった材料を買いに来たんだ」
「それなら、オンボロ寮のキッチンを貸します!調理器具ならいろいろ揃ってますよ!だから一緒に雪合戦しましょう!」
「途中参加なんてズルじゃないか?」
「いいえ、新しくチームを作るんです!」

タルト作るのも手伝うし、材料の荷物持ちもするのでどうかと頼み込む。困った顔で悩むトレイは、優勝賞品は貰えるのかと言い出した。
ミヤは何のことか分からなかったが、試合に参加しないミヤに伝えていないだけでジェイドが何か用意しているのだと思い、もちろんですと根拠もなく言い切った。
それを聞いたエースとデュースも1セットだけなら暇つぶしになるかな、なんて手のひらを返す。
早々にメンバーが集まったと喜ぶミヤは、グリムをエース達に預けると残りのメンバーを集めるために次の目的地へ急いだ。

ミヤは軽い足取りで植物園へ向かうと、落し物を探すようにキョロキョロしながら園内を探す。適切に温度管理された園内は冬だとは思えないくらい快適で、着ていたコートを腕に掛けて探す。すると草の隙間から覗くふさふさの尻尾を見つけ、静かに近付いた。

ストン

茂みの中で大きな体を倒し空を仰ぐ様にして寝ているレオナの横に、静かに座った。昼寝中に起こされるとめちゃくちゃ怒るとラギーが言っていたのを思い出して、どうしようかとミヤは膝を抱えてレオナを見る。
とっても穏やかな顔をして寝ている。獣人属は不思議だ。人と変わらないのに、動物の耳と尻尾がある。妖精と人間のハーフはホグワーツで見たことがあったけれど、獣人属は獣と人のハーフではない。人種というか種族の違いのようなものだ。
体の作りとかは人間と同じなのだろうかと、まじまじと見ていると唇が動いた。

「さっきから視線がうるせぇなぁ、なにジロジロ見てやがる」

薄く開いた瞳がミヤを射抜く。パッと慌てて体を離し「すみません」と謝ると、レオナは深いため息をついて怠そうに上体を起こし何か用かと問う。
ミヤは、オンボロ寮で雪合戦をしていること、竪琴役で参戦できなくてつまらない事、チームを作って無理矢理参戦することを話した。
全てを聞いたレオナは、ハッと鼻で笑う。

「それで、この俺にも参加しろって?」
「私のチームに入って、私を除け者にした人たちの鼻を明かすの手伝ってくれませんか?」
「俺には何のメリットもねぇな」
「それは…優勝者には賞品がありますよ!」
「賞品ねぇ」
「どんなものかは知りませんが、みんなやる気でしたからジェイドさんが用意してるんだと思います」
「なるほどねぇ……お前はそれでいいんだな?」
「賞品は私以外のみんなで分けてくれて構いません」
「ふん、いいぜ。参加してやるよ」

それなら早速行きましょうと腕を引っ張るミヤに、レオナはため息を吐きながらのっそり起き上がる。
ミヤが腕を離した隙に防寒着に着替える。レオナは賞品について心当たりがあり、チームで分けるのは気に入らないが仕方がない。それにしても賞品を知らないなんて気の毒にと、嬉しそうに歩くミヤの背中を見て笑った。