- 『なんでもない日のパーティ』を真似するわけじゃないけど小さなホールケーキを買った。欲望のまま食った対価として開店後三十分足らずで売り切れるというケーキを買いに行かされたついでだ。
ショーケースに並ぶケーキの一番上で、映えると噂のケーキよりオレの目を引くケーキがあった。控えめなトッピングなのに生クリームの絞りが繊細で見れば見るほど華やかで、大好きなあの子の顔が浮かんだ。
朝早くから並んで眠くて仕方なかった頭が少しだけ晴れた状態でオンボロ寮のドアを叩いた。立て付けの悪い金具が軋む音がして力加減ミスったなと思っていれば、私服姿の小エビちゃんが顔を出した。
「ケーキ持ってきたよー」
アザラシちゃんがいないのは知っていた。一人用には大きいホールケーキを見せれば表情が明るくなる。かわいいなあと胸を弾ませながらテーブルの上に置いた。小エビちゃんは割と器用でケーキを食べるのに必要な物を用意してる。ふと紅茶をいれてた小エビちゃんの手が止まった。
「これってもしかして賄賂ですか」
警戒し過ぎな小エビちゃんに歯を見せて笑った。美味しそうなケーキを見せられ嬉しそうな顔しちゃってさ。「今になって警戒するなんて遅過ぎだろ」と言いながら、そんなつもりなど全くなかった事は噯にも出さない。
「そーだなーじゃあ、明日モストロに来てよ。
小エビちゃんの好きな裏メニュー注文して?」
「こ、紅茶だけにします…」
思った通りの答えを笑い飛ばし買って来たケーキを食べながら小エビちゃんの口に無理矢理突っ込んでやった。悔しそうな顔が美味しさで綻びそうになってるのが愉快だ。
笑いながら何度も口へ運んでやると諦めたように口を歪ませながらも受け入れてる。かわいくて給餌する手が止まらない。
オレが考えた小エビちゃん専用の裏メニュー。料金は小エビちゃんもちだけどオレが払ってやってもいい。このカワイイ口にオレが作った料理を運んでやるのが楽しいんだ。特に咀嚼する時の唇の動きにそそられる。
ああ、小エビちゃんは律儀だからちゃんと明日オレが指定したメニューを嫌そうにもじもじしながら注文すんだろうな。目の前で次のケーキを待つように薄ら開く唇を食い入るように見つめ、クリームを舐めとるように舌舐めずりをした。
/ 今日の二人はなにしてる?より
なんの記念日でもないけれどケーキを買った。お茶を淹れて、小さいホールケーキを二人でぺろり。よく食べました。
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