- 「こんにちは、フロイド先輩」
そう言って笑う可愛い女がオレのカノジョだ。陸の女の子は小さい子ばかりでどの子も海じゃ生きていけなさそうな奴ばかり。小エビちゃんだってそう。お世辞でも大きいなんて言えないし、力が強いわけでもない。
知り合って一月経つころ「先輩のこと、好きになっちゃいました」なんて顔を赤らめて言ってきた時、オレはタイプじゃないってフった。一瞬傷ついた顔をして笑った顔に少しグッときたのは気の迷いだと思うことにして小エビちゃんを放置した。
小エビちゃんをフってから遠くなった距離に苛立ちを覚えるなんてオレは意外と自分の気持ちに鈍感だったようだ。好きなら簡単に諦めてんじゃねぇよなんて理不尽な怒りをあの子に向ける。それを感じ取った小エビちゃんがオレを避ける。最悪な循環。
「泣いてんの? 小エビちゃん」
ビクッと肩を震わせ慌てて去ろうとする小エビちゃんの腕を掴んだ。細い。すごく細くて思い切り掴む手が躊躇し力が緩む。逃げない彼女の頬を涙が伝っていた。なんとかしてあげたい。そんな感情がオレにあったことに驚いた。
小さな肩を抱き寄せ小エビちゃんの体をオレの体に隠す。泣いてる理由より、彼女を慰めやるより先にオレは自分の感情を優先していた。
「小エビちゃんのこと好きになっちゃった……オレのカノジョになってくれない?」
「どうして……」
当然の問いだ。オレは自分の胸中を言葉にできる限りで話した。小エビちゃんはオレの腕の中でこくんと小さく頷き、オレたちの関係は始まった。そしてその後、オレの知らないところで別の関係も始まったんだ。
「先輩の手って大きいですよね」
そう言ってオレの手に手を重ねる小エビちゃんにドキドキする。何度目か分からない事後のベッドの中の戯れにオレはいつも翻弄されてる。正直言ってオレは一度スッキリしちゃってるし、彼女の体力を考えるともう一回するよりまた明日一緒に寝たいって気持ちの方が強いから、いつも戦ってる。
「オレこういう触れ合い好きなんだけどさぁ、ちょーっと小エビちゃんの触り方やらしーよね」
「……バレちゃいました?」
酷い女。オレの我慢なんか知らないで煽ってくるんだ。オレがいつもどれだけ加減してやってると思ってるんだか。分かってても分かってなくても、小エビちゃんがその気なら挑発を受ける。今までも半分くらい、いや8割くらいは受けてきた。
結局は小エビちゃんの望むことは叶えてあげたいし、それがオレのためになるなら望むところだ。オレは、この小さいながらも挑発的に誘ってくるカノジョが可愛くて仕方がないんだ。
back