- 朝からすげー雨が降ってた。雨避けの魔法が使えないやつは傘を開いたり閉じたりしてその度に濡れててできないやつってカワイソーなんてあんまり思わないけど、そんな感想を持った。
「ちょっとグリム、ブルブルしないで」
「しょーがねぇだろー? 濡れちまったんだから」
陸の訓練所に居た犬が同じ事してたのを思い出す。あいつはアザラシちゃんよりだいぶデカくてダイナミックだったけど。魔法が使えないって大変そう〜なんて思いながら授業に向かった。
ある程度の湿度がないと調子が出ないけど、熱い上に湿度が高いと不快な汗をかいても全然気分が上がらない。プールに入りて〜なんて思いながらずっとモヤモヤとした一日を過ごした。
授業が終わり部活に行くかどうか未だ止まない雨を見ながら考えあぐねていた。視界の端。あ、ナマエちゃん。って思った瞬間あの子の横を走り抜けるやつが外に出た瞬間、ザバッと多量の雨水がナマエちゃんにかかった。
「あ、わりぃ……ってヤッバ」
見覚えのある生徒が、自分の両腕を掴んで体を隠すナマエちゃんをガン見してる。オレは急いで走ってって自分のジャケットでナマエちゃんの体を隠した。キモい顔で見んな。
「はい、終わり」
「せっかくの役得だろ。何してんだよ」
「あ? それ以上言ったら契約の期限縮めんぞ」
「え、あ……すんませんでしたー!」
「あっははは、ばーか!」
濡れた地面で足を滑らせながら走っていく情けない後ろ姿を笑い飛ばした。契約内容途中で変えられるわけねーだろと、心の中でバカにする。契約に関して後ろ暗いことがありそうな男をよそに抱きしめていたナマエちゃんをそっと離した。
「急にごめんねー」
他人に触れられるのが苦手なナマエちゃんに謝れば、ふるふると首を横に振られる。頭から水を被ったせいで俯く髪先から雫が地面へと落ちた。
「ありがとうございます、フロイドさん」
「んふ、どーいたしまして」
それよりも早く寮に帰りなって言ったら、オレが濡れてるのを気にしてきた。恥ずかしいことになってるのに他人のことを気にしちゃう、そういうとこが危なっかしくて心配になる。
「オレは雨に濡れて逆に気持ちーよ」
「私のせいみたいでちょっと気になります」
「んー、じゃあさ一緒にオンボロ寮に言って服乾かそっか」
小さな声で「はい」って簡単に返事するんだもんマジで危機感どうなってんのって思った。まあ、オレ相手なら全然良いけど、と雨避けの魔法をかけてやり並んで寮へ行く。
さっきのやつが雨避けの魔法に失敗してくれてよかったかもなんて思いながら、最近はオレとナマエちゃんのパーソナルスペースが少しずつ狭くなってるのに気付く。
最初は人一人分空いてたスペース。今じゃ手が触れそうな距離になってる。ナマエちゃんとの距離が縮まるなら雨もいいかも。なんて思った。
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