- 溶けたアイスが手首を伝い、温い感触が頬を伝う。鼓膜を震わせた言葉が脳に届いて理解するまで細胞一つ一つの働きまで止まった気がした。さっきまで聴こえていた遠くの喧騒が聞こえない。
「今のさ、この前の返事なんだけど。もしかして心変わりしちゃった?」
眉尻を僅かに下げる姿に必死で首を振って否定すると、目の前の人は見たことないくらい柔和な顔で笑う。さっきの言葉は嘘偽りなく本心なのだろう。
その場でどっちかの返事をされると思っていたのに「その返事って今じゃなきゃダメ?」と待たされるとは思わなかった。今日までの一週間ずっとイエスかノーか何で保留なのかとモヤモヤと考えては、いつ来るかも分からない返事に悩まされてきた。
「もう一回言うけど、オレもナマエが好き。だからナマエもこれからのことちゃんと考えてよね」
自分の涙声が鼓膜を叩いて、本当に嬉しいとき言葉よりも涙が出るのだと知った。
/ こんなお話いかがですかより
フロイドで「溶けたアイスが手首を伝う」で始まり「本当に嬉しいとき言葉よりも涙が出るのだと知った」で終わる話