- ※ 玲王がヤンデレになる
「次はいつ?」
「……は?」
「だから、次はいつなのかって聞いているの」
「なんの話だよ」
名前は玲王が一人になるところを狙って声をかけ、振り向いたところに詰め寄る。そして百八十五センチもある男を壁際に追い詰め、壁ドンをししたから玲王を睨め付ける。
「……て、…より、…方が……」
「悪い、もう一回言ってくれるか?」
「私より凪くんといる方が多いから! いつ会えるのかって聞いているの!」
「……わかった。(お前が寂しくないよう毎日会える環境にすればいいんだよな。卒業後一緒に住む所いくつかピックアップしてあるんだ。一緒に内覧したいし…ブツブツ)考えておくよ」
「玲王……」
目を潤ませる名前を見て嫉妬してるの可愛いなんてぎゅっと抱きしめるけれど、名前は子供っぽい嫉妬をしてしまった自分との関わり方を見直すという意味での“考える”だと思って悲しくなっていた。
数日後、行動の早い玲王は早速名前をデートに誘いコンシェルジュ付きのセキュリティバッチリな高層マンションに内覧に来た。
どういう事なのか理解できない名前だったが、慌てふためく姿がかわいくて驚かせることに成功したと玲王がおかしそうに笑う。
「一緒に住む部屋はこういうところがいいかと思うんだよ。開放的だし、日当たりもいい。なによりプライベートが侵されないだろ? どう、気に入った?」
「どうって……え、一緒に住むの?」
「当たり前だろ〜? お前が凪にどうしてそんなに嫉妬してんのかわかんねぇけど、俺の人生のパートナーはお前なのは変わんねーし。不安ならもう一緒に住んじゃおうぜ」
「ぇ、と」
嬉しく思いつつもあまりの急展開に追いつけない名前は、喜びの前に驚きが出てしまった。玲王はそんな彼女の様子に少しだけ顔を曇らせる。
「気に入らねーの? いくつかピックアップしてるし他も見にいこうか」
「あーいや、違う。そうじゃないの! まだ私たち学生だし…えと、玲王は同棲しようって言ってるんだよね?」
「結婚前提の同棲な。プロポーズはまだしてねぇけど、それは俺が結構できる年齢になってからちゃんとしたいと思ってる。それまで待って欲しい」
自分との将来を考えてくれて行動力も決断力もそして経済力もある。十七歳にしてここまで大胆に行動できるのは玲王だからできることだ。
ただ、名前は将来についてぼんやりと思い描くのみ。それも夢物語のような気分での描き方。具体性はなく、もしなれたらいいなぁくらいのものだ。
二人の間には温度差というより思い描く未来の濃度があまりにも違いすぎた。
「こわっ」
「は?」
まだ付き合い始めて一月。あまりにも濃い玲王からの愛情に名前の気持ちは全く追いつけない。凪とばかり過ごしている玲王の時間を少しでも自分と過ごしてくれたら嬉しい。この前の嫉妬はそれだけのこと。
W杯優勝という夢を叶えるため努力する玲王を応援しつつも少しだけわがままを言ってしまっただけだった。それなのに、どうしてこうなってしまったのか。
*
「ねぇ、玲王。今日は何日?」
「今日は俺たちが付き合って一年三ヶ月と七日記念日だな」
「ふーん」
初めて玲王と内覧してからだいたい一年くらい経ったらしい。ろくに歩かせてもらえなくなった脚は少し痩せてしまったし日光がとても眩しく感じてカーテンを締め切ることが増えたから肌も色白になったと思う。
名前は玲王と“同棲”している。勉強は玲王が教え、料理も玲王がする。食べて寝てセックスをする日々はとても充実している。玲王がなんでも娯楽をあたえてくれるからだ。
外出やスマホは許してはくれないけれど慣れてしまった。慣れるしかなかった。
「名前、愛してる」
「大好きたよ、玲王。ずっと一緒にいてね」
「当然だろ」
名前と玲王の薬指。揃いのプラチナリングがダウンライトの光で輝いた。
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