- 耳障りのいいその声が好きだと思った。オレに笑いかけてくれた時、もっと見たいと思った。料理する時の真剣な顔が面白くて笑ったら怒られて、その全然怖くない姿が可愛かった。課題が面倒で寝てたら、ナマエが隣で寝てて心臓がとくんと跳ねたのは奇妙な感覚だった。
「ねっそのバラちょうだい」
「いらねーからいーけど」
「代わりにこの香水あげる」
「えっ別に」
嬉しそうに頬をゆるめる顔にいらないという言葉を飲み込む。真っ赤なバラを一輪嬉しそうに持ち帰る姿に言葉が出なかった。もしもの話なんて馬鹿らしいけど何か声を掛けていたら変わったんだろうか。
「ふざけんなよっ」
静かなオンボロ寮のナマエの部屋。部屋の主はもういない。小さなティーテーブルのその上、メッセージカードの側にある花瓶にバラが一輪だけ挿してあった。
/ こんなお話いかがですかより
フロイドで「耳障りのいいその声が好きだと思った」で始まり「花瓶にバラが一輪だけ挿してあった」で終わる話