- 天真爛漫な兄を見て育った。兄を見ていると私も楽しい気持ちになる。ただ、少し視野を広げると兄に振り回されて困ったり焦ったり忙しくしている家人が見えて、私たちは好き勝手出来る身分なんだろうけれど周りの人を困らせたくはないと思った。
「お嬢様はカリム様と正反対ですね」
侍女が言った言葉は褒め言葉かあるいは。私の侍女は私よりも五つ歳上で私が良くない事をした時はちゃんと教えてくれる。主従関係なのかもしれないけれど、長女の私は彼女を優しくて素敵なお姉さんだと思っている。
兄には友人と呼べる人がいない。だから同じ歳のジャミルさんを慕い、頼り、遊びに誘う。小さい頃の記憶では二人とも楽しそうにしていたのに、最近の二人は噛み合っていないように見えた。
「お嬢様はお二人のことをよく見てらっしゃいますね」
私の侍女は近々結婚するらしい。結婚後どうするのかと思えば仕事は変わらず続けると言われ、とても嬉しくて私は彼女に抱きついてしまった。困らせてしまったかとハッとしたけれど彼女も嬉しそうに笑ってくれて、兄達とは違う関係に胸がくすぐったくなった。
「オレだって混ざりたいよ。でも、この役はオレにしかできない事だから仕方ないよな」
アジーム家主催の宴に学友を招待したらしく、ジャミルさんは彼らを接待していた。そんな彼らを見つめ残念そうに笑う兄が私にはとてもカッコよく見えた。アジーム家の人間として私も兄のように成長したいと思った。
/ 「水声」1D1T July120より
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