- はたはたと傘に降り注ぐ雨はアスファルトに写り込むネオンを乱し、スカートの裾とヒールのつま先を濡らしていた。隣を歩く男と手も握らず別々の傘を差し比較的上品なネオンで照らされた建物へ入る。薄暗い館内を特別会話もないままエレベーターに乗り込み、直前に取った部屋へ体を滑り込ませた。
服に着いた水滴を払いもせずに冷えた唇が私の唇をプレスした。性急に進められる行為は今日に限ったことじゃない。私はきっと都合のいい相手なんだろうと理解している。ここへ辿り着く前に寄った高級な店だって、きっと、自分のために寄ったに過ぎない。食事の時に褒めたネイルの意味だって知らないだろう。
彼の口から飛び出す褒め言葉は全部その場限りの社交辞令だ。どんなに蕩けるような顔をしていようが、切羽詰まった表情をしようが、切ない目をしようが、それ以上が無いのだからその場限りの感情でしかないのは分かりきっていた。
中途半端に乱された服の隙間から除く、彼が贈ってくれた紫色の下着。行為が終わったら全部見せつけて、白いネイルをした指で摘んだメッセージカードを叩きつける。色の意味が分からなかったって、緑のインクで書かれた言葉を見れば理解できるでしょう。
『終わりにしましょう さようなら』
これ以上を望めないのなら、この関係は続けられそうにない。私の心の痛みを口にする前にカードは微塵に破かれ、手元の向こうには今まで見たこともない鋭い目をした彼がいた。再びベッドに沈んだ身体。戸惑いや疑問、恐怖とほんの少しの期待は快感に変わり何も考えられなくなった。
/ 女性から別れを切り出す日(9/14)
紫色の物を身につけ、白いマニキュアを塗り緑色のインクで書いた別れの手紙を手渡す
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