行ってきますと寮を出てポムフィオーレ寮を目指す。途中、エースとデュースに出会った。砂漠のように暑いオンボロ寮とは真逆で極寒の寒さで、耐えられなくなって出てきたらしい。それでも女王の法律の下、お茶会を行なったと言うのだから法律を遵守しようとするリドルは本当呆れる程にすごいと思う。早くなんとかして欲しいとこぼすエースが、フェアリーガラでも何でもいいから早く解決してくれと嘆いた。
「そういえばユウから聞いたが、妖精のとは別のファッションショーに出るらしいな」
「ミヤがモデルねー、失敗して大恥かかないよう頑張れよ」
「失敗は絶対しない。その為に毎日努力してるんだから!」
「見たところあんまり変わっていないようだが」
「たった一ヶ月で変われんの?」
「変われるかじゃない!変わるの!」
「その通りだよ、
音もなく現れたルークに全員が肩を跳ねさせた。いつからいたのか、どこから現れたのかもわからなかった。けれど確実に話は聞かれていたようで、ミヤの努力が少しずつ現れていると語り出した。代謝が良くなってるとか、デトックスのおかげで肌艶もいいし化粧品も肌に合っているとか、フェイスラインが綺麗になってきているとか自分でも気付かないところを指摘されて怖かった。
ミヤの努力を細かく褒めちぎる勢いに引き気味の三人を全く気にしないルークが、こんな所で油を売っている暇は無いんじゃないかと突然まともなことを言うものだから面食らった。急いでボールルームに着くと、走ってきたのがバレたのか「たるんでる」とヴィルに叱られた。
今日はウォーキング練習を10周してから、トレーニングを行うのだが先にウォーキングをしていたレオナが昨日とは見違えるほど、綺麗に歩いていた。ヴィルに付き纏われるのが嫌でさっさと終わらせたかったようだけれど、ウォーキングの次はポージングを覚えなければならないようだ。しかも、ポージングはその人の個性によって魅せ方が変わると言う。一から考えるなんて大変だなと思いながら、ヒールに履き替えてウォーキングを開始した。
推薦したクルーウェルの期待を裏切らないよう毎日真面目に取り組んだ。魔法以外のことでこんなに努力したことなんて初めてだったから、とても新鮮だった。しかし、今日はそのトレーニングメニューはいつもの半分だ。理由は、フェアリーガラを見るため。といってもただ見るわけじゃない。妖精とはいえファッションショーを実際に見て、学ぶのが目的だ。
ショーを見るといっても植物園の中には入れないので、学園の生徒が作ったというドローンが撮影した映像を見る。クルーウェルに言われた教室に来たのに、いたのはケイトと髪が青く燃え盛っているイデアだけだった。ミヤが教室に入ると、イデアはビクッと肩を飛び上がらせて「えっ、誰?え、あっ例の女の子?ひぇっ」と小さな声で言っていた。小さな声だったけれど、教室には三人しかいないので丸聞こえだった。
「ミヤちゃん、久しぶり〜☆なんか、頑張ってるみたいだね」
「ヴィルさん厳しいから大変ですけど、ちゃんとショーを成功させたいので」
「いいね〜成功したらモデルの仕事するの?」
「まさか!しませんよ、今回だけです」
「え〜〜そうなんだ、ざんね〜ん」
「ケイト氏のノリに臆さない子が陰キャなわけないですし。せめて巻き込まれないよう黙っておこう」
イデアのことは一方的に知っていたが、会うのは初めてだった。今回のドローン撮影に協力してくれた人で、挨拶しようとしたけれど関わりたくない様子だったのでそっとしておこうと思った。それなのに画面がよく見えるようケイトがイデアの隣を勧めるので困った。怯えたように見てくる彼に申し訳なく思いながらも彼の隣に座った。
「少しは拙者の気持ちを分かってくれるかと思ったのに、やっぱり陽キャと陰キャはわかりあえない。っていうか僕なんでこんな目に遭ってるの?厄日?完全に厄日ですな。ジャミル氏の成果を見るために仕方なくヴィル氏に言われてドローンを飛ばしているだけなのに、その本人はまだ来ないですし関係ない人が来て囲まれますし。あああ、こんなことならオルトに頼めば良かった・・・」
本当に申し訳なくなるくらいの反応をされて少し居た堪れなくなっていると、画面にレオナたちが映し出された。
妖精たちの目も釘付けになる程のパフォーマンスは圧巻だった。カリムとジャミルの軽快かつダイナミックなダンスが妖精たちを楽しませ、レオナの堂々としたウォーキングの後の服を翻す大胆かつ豪快なポージングが妖精たちを虜にしていた。エキゾチックというテーマに沿った出立ちと調和した衣装、さらにその衣装をより魅力的にするウォーキングとポージング。すべてモデルの力量にかかってくるのだと背筋がゾクッと泡立つような感覚が走った。