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『ねえあんた。』

「え?」

『完全不審者なんだけど。ジロジロ見てきて気持ち悪い。』



私は綺麗なものを蝶よ花よと愛でるのが好きなだけです。
罵られることが好きなわけではありません。断じて。
ただ、綺麗な人にされるのであれば別なのかもしれません。
お母さんお父さん。夢はいけない子に育ってしまいました。



「あの、」

『何?』

「一度だけでいいので、おさわりいいですか?」



目前の綺麗な顔が、これでもかってくらい歪んだことだけは確認できました。
聞くに耐えない罵詈雑言ですら私にはご褒美に思えます。
お母さんお父さん。
夢は新しい扉を開けてしまいました。
今日も幸くんは可愛かった。
それ以上に美しく、気高く、なんて素敵なんでしょうか。

出会いは衝撃的だった。
たまたま友人に連れられた舞台を観に言った時に、彼はヒロインをしていたのだ。
なんと美しく気高く、可愛らしいこと。
私はその姿を目に焼き付け、ポスターまで持って帰る始末だった。

友人は、すめらぎだかするめだか、天馬サマーなんて目をハートにしていたが、私の豹変ぶりにそのハートだった目をまんまるとさせて、どうしたのなんて心配していたが。

それからしばらくして、その天使は奇跡的に私の目の前に現れた。
電車で。制服姿で。
彼の噂をどうにか調べ上げて、彼の帰る時間等を探し当て、最近はこうして後ろから追いかけていたのだが。

最近それがバレた。

というか、たぶんバレてた。

それでも飽きることなく、彼の背中を追っている。
前向きに考えるのは得意だし。
彼に存在を認識してもらえてるなんてこれ以上とない幸せ。



『あれ?夢ちゃーん』

「ん?なに?たいち。」

『久しぶりの一緒のお出かけなのに、なんか別のこと考えてたっスね?!』

「いや、十数年付き合いある幼馴染との何百回とあるお出かけの一回に、そんな希少価値を求めないでよ。」

『えー!』

「そーやって気にしいだからモテないのよ。わかる?」

『夢ちゃんキビシーっス…』

「で?何?」

『いやー、さっきからずっとケータイ片手ににやけてるし、なんなのかなーって!』

「あ、こら、ちょ、勝手にケータイを取るな!見るな!」

『ん?ロック画面?後ろ姿…?ん?』



気づけば手が出ていた。
元気な赤毛はその場で沈没している。



「お前ごとき赤毛が!私の!天使に!触れるな!」



ぷんすこ音を出す勢いで私は赤毛の元を去る。
あのやろーあとでめっちゃケータイ洗うんだ。
いや待って洗っちゃダメだ私の幸くんが消えてしまう。
アルコール消毒しよ。




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