01
『ねえあんた。』
「え?」
『完全不審者なんだけど。ジロジロ見てきて気持ち悪い。』
私は綺麗なものを蝶よ花よと愛でるのが好きなだけです。
罵られることが好きなわけではありません。断じて。
ただ、綺麗な人にされるのであれば別なのかもしれません。
お母さんお父さん。夢はいけない子に育ってしまいました。
「あの、」
『何?』
「一度だけでいいので、おさわりいいですか?」
目前の綺麗な顔が、これでもかってくらい歪んだことだけは確認できました。
聞くに耐えない罵詈雑言ですら私にはご褒美に思えます。
お母さんお父さん。
夢は新しい扉を開けてしまいました。
今日も幸くんは可愛かった。
それ以上に美しく、気高く、なんて素敵なんでしょうか。
出会いは衝撃的だった。
たまたま友人に連れられた舞台を観に言った時に、彼はヒロインをしていたのだ。
なんと美しく気高く、可愛らしいこと。
私はその姿を目に焼き付け、ポスターまで持って帰る始末だった。
友人は、すめらぎだかするめだか、天馬サマーなんて目をハートにしていたが、私の豹変ぶりにそのハートだった目をまんまるとさせて、どうしたのなんて心配していたが。
それからしばらくして、その天使は奇跡的に私の目の前に現れた。
電車で。制服姿で。
彼の噂をどうにか調べ上げて、彼の帰る時間等を探し当て、最近はこうして後ろから追いかけていたのだが。
最近それがバレた。
というか、たぶんバレてた。
それでも飽きることなく、彼の背中を追っている。
前向きに考えるのは得意だし。
彼に存在を認識してもらえてるなんてこれ以上とない幸せ。
『あれ?夢ちゃーん』
「ん?なに?たいち。」
『久しぶりの一緒のお出かけなのに、なんか別のこと考えてたっスね?!』
「いや、十数年付き合いある幼馴染との何百回とあるお出かけの一回に、そんな希少価値を求めないでよ。」
『えー!』
「そーやって気にしいだからモテないのよ。わかる?」
『夢ちゃんキビシーっス…』
「で?何?」
『いやー、さっきからずっとケータイ片手ににやけてるし、なんなのかなーって!』
「あ、こら、ちょ、勝手にケータイを取るな!見るな!」
『ん?ロック画面?後ろ姿…?ん?』
気づけば手が出ていた。
元気な赤毛はその場で沈没している。
「お前ごとき赤毛が!私の!天使に!触れるな!」
ぷんすこ音を出す勢いで私は赤毛の元を去る。
あのやろーあとでめっちゃケータイ洗うんだ。
いや待って洗っちゃダメだ私の幸くんが消えてしまう。
アルコール消毒しよ。
▽
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