03


(side.虎杖)


隣を進む小さな歩幅に合わせ、ゆっくり歩く。言葉に詰まっていたさっきよりも随分平常通りに戻ったみょうじは、話しかける度にこっちを見上げ、笑いかけると返してくれる。品のいい目元を緩め、ほんのり歯を覗かせてはにかむ彼女特有のこの笑い方が、初対面の頃から好きだった。


純粋に可愛いと思う。肩も腕も腰も折れそうなくらい華奢で薄く、風に靡く柔らかそうな髪からはいつも甘い花の匂いがする。言葉の選び方だったり反応だったり、たぶん表へ出す前に一回呑み込んで考えてんだろうなってくらいにまろやかで、釘崎や真希さんみたいに語気が強まることも我を出すこともない。誰が良いとか悪いとかって話じゃなく、俺の中の“気遣いが出来る女子像そのまんま”って感じ。だからか傍に居ると、心臓の辺りがむず痒くなる。女の子だなって、ちょっと緊張する。今まで接してきたどの女子とも違った感覚。これが特別ってやつか。

そもそも飯に誘ったのもみょうじだからだった。もしこれが釘崎相手ならそんまま教室、伏黒だったらどっちかの部屋で聞いただろう。


『言い方、分からない、感じ……』


夕暮れ時の教室内。ただでさえ逆光で表情が見えづらいってのに、珍しく窄んでいった声がなんだか引っかかって。謝るようなことなんて何もない中、それでも謝罪を口にした沈んだ面持ちをどうしても見過ごせなくて。もちろん話の内容も気になったけど、それ以上に笑っていて欲しかった。

俺でいいならなんでも聞くし、いくらでも待つ。言い方なんて、むしろ考えてくれなくていい。思ったこと全部そんまま吐き出されたって粗方受け止められる。でもそう言ったらたぶん、みょうじの方がめちゃくちゃ気にするだろうから。だから美味しいモン食べてひと頻り駄弁って、そうして落ち着いた帰り際にでも聞ければいいかなって、近くのいきなしステーキに入った。




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