お母さんには褒められた。あらスッキリしたわね、って。妹からの評価も上々。お父さんは無反応だったけど、お兄ちゃんはいいんじゃねって笑ってくれた。だからまあ、皆の反応に心配なんて微塵もなかったわけだけれど、まさか衛輔がこんなに照れるだなんてびっくりだ。さっきから全然目が合わない。
仕方ないから無理やり視界に入ってみようと、あっちへこっちへ頭を振る。
「衛輔?」
「ん?」
「もーりーすーけ」
「なーあーに」
「衛輔ってば」
「だからなんだよなまえ」
ぐいん、ぐいん。……ダメだ。酔ってきた。
反対方向へ動く視線を追うのはやめ、大人しく床へしゃがみ込む。机ひとつ挟んだ向かい、ほんのり赤いその片耳を凝視する。こういう時、衛輔は結構強情だ。ちょっとやそっとじゃ折れてくれない。どうしたもんか。別に見た目の感想は要らないし、照れてるだけって分かっていても、やっぱりこの状況はちょっと寂しいわけでして。
未だそっぽを向いたまま。無反応が気になったのか、一瞬やって来た視線にしゅんと眉を下げてみる。そうしてしょんぼり目を伏せた途端、空気が揺れた。どうやら上手くいったらしい。動揺し、ぐぎぎ、とブリキみたいに鈍くこちらを向いた衛輔が俯いた。
「あー、もう」
「?」
「そんな顔すんなって。ただでさえ可愛いのに……」
ちらり。漸く私を映した瞳が、また横っちょへ逸れていく。むいっと尖った唇は、照れくさそうで不服そう。
「放課後までには慣れるから、……それまでちょっと我慢して」
ずるずる腕の中へ隠れていったその首筋は、びっくりするくらい熱かった。
title まばたき
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