夢が流れ落ちる場所




うつらうつら。傍らで船を漕いでいる紅白頭が、ついにゆっくり傾いた。誰かの「あ」って声と同時に重みが乗って、咄嗟に伸ばした背筋もむなしく肩が下がる。人の頭って結構重い。

落とさないよう気を付けながら、きっと疲れているのだろう焦凍の枕代わりに徹する。すうすう鼓膜を掠める寝息は穏やかで、みんながいると安心するのかなあ、なんて思う。まだ夜九時だけど、ご愛嬌。焦凍の夜は光の速さでやってくる。


「轟くんが寝落ち……」
「ね。めずらしい」
「みょうじもあんま見ねえのか?」
「うん。眠くなったら先に布団入ってる」
「あー想像ついた。あれな。結構淡泊な感じな」
「んー……まあイチャイチャはしないかな」


お互い楽に、気を遣わずに生きている。そうしていこうね、そうなれたらいいね、って。心を交わして少ししてから、ふんわり話して小指をきった。

基本的に焦凍と私は似通っている。リアクションが薄いとか、親に抑圧されて育った環境だとか、畳のにおいが好きだとか。あと冷たいお蕎麦も好きかな。だからたとえ言葉数が少なくたって、自然にゆったり落ち着けた。互いが互いの心を支え、ひどくやわい安らぎの海に二人そろって揺蕩える。

産まれる前から呼び合っていた、運命みたいな関係性。こんな風に形容するとなんだかチープに聞こえるけれど、それでも他に見つからない。肌を寄せてイチャイチャ愛を確かめずとも、私は焦凍が一番で焦凍も私が一番で、そこは生涯揺らがない。揺らぎようがないのだと、左側から滲む熱が、そうっとまろやかに裏付ける。


title オーロラ片




back