釣り合っているか不安になる




電子ニュースにミリオが載ることは、そう少なくない。瓦礫の中から被害者を救出なんて、彼にとってはよくある話。インターン先での功績は、たぶん校内一。先生方も各地のヒーローも実力を認めている、将来有望な卵。そんな凄い彼に、まさか告白されるなんてなあ。


ベンチに腰を下ろし、背もたれへ頭と背中を預けながら、ぼうっと空を眺める。今日も綺麗な快晴で、雲は白いし空は青い。そんな当たり前同様に、ミリオは強い。可もなく不可もなく、特に目標もないまま親の言う通りにヒーローを目指している私とは全然違う。もっと優秀でもっと明るくてもっと可愛くて、例えば、ねじれちゃんみたいな女の子が似合うと思う。

もちろんミリオのことは嫌いじゃないし、なんなら良いなって思ってたし、嬉しくてつい差し出された手を簡単に握ってしまったけれど、ちゃんと考えれば良かったって後悔が、どうしても拭えない。


「溜息ついてどうしたんだい?」
「ミリオ……」
「君らしくないよね」


に、と歯を見せて笑った彼は「悩み事かい?」と隣に座った。「まあそんなとこ」なんて曖昧に返し、相槌とともに差し出された缶コーヒーを受け取る。ひんやり冷たいそれは、私の好きな銘柄だった。


「貰っていいの?」
「もちろん!」
「ありがと」


プルタブをあけて、喉へ通す。ほろ苦さと絶妙な甘さが口腔に広がって、肩の力が抜けていく。万人を救う優しさが、今は私だけに向けられている優越感が心地いい。

ずっと好きでしたってあの日の言葉が、胸の内で燻る。嬉しかったんだよ。そう言ってもらえて。何の取り柄もない私を、こんなに素敵な人がって。とても、嬉しかったんだよ。


「ねえミリオ」
「ん?」
「私、親の敷いたレールの上を走ってるだけでさ。強くもないし向上心も薄いし甘ちゃんだし、ミリオには相応しくないなあって思うんだけど、それでも良いの?」


夏の風が吹き抜けて、雲間から射す光の中、太陽みたいなミリオが笑う。


「そんな風に、自分より俺の幸せを考えてくれるなまえだから、好きになったんだよね」




※夢BOXより【個性が消えていないミリオと付き合う夢主で、ミリオと釣り合っているのか不安になるがハッピーエンド】




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