自信のない後輩を励ます




初めての有償インターンまで後三日。
全然自信なんてないし、何なら緊張で吐きそうだし気分は最悪だ。胃の中がずっと気持ち悪くて、ここ最近ゼリーしか食べていない。

元々食に関してはとっても低燃費だから別に支障はないんだけれど、それでも、食堂のご飯が美味しく感じられないのは切ないし、ランチラッシュに申し訳ない。食べなきゃと思って注文した炒飯が、目の前で泣いている。私も泣きたい。


心の中で大号泣しながら食堂の隅で睨めっこをしていると、通りがかった天喰先輩が足を止めた。


「凄くしょんぼりしてるけど、何かあった…?」
「天喰せんぱぁい……!」
「っ!?な、泣かないで……!」


優しい言葉に、堰き止めていた涙が溢れだす。ぎょ、とした先輩は、慌ててトレーを置いて隣に座ってくれた。

えぐえぐと泣く私の目元にハンカチを当て、背中を撫でてくれる大きな手が温かい。さすがビッグスリー。慰め方も完璧だ。もう好き。天喰先輩好き。単純思考の頭が意外に早く落ち着きだすと共に、涙は止まった。

この不安でいっぱいな胸の内を「俺で良かったら聞くけど…」と、控えめに申し出てくれた先輩へ打ち明ける。ぽつぽつ思いの丈を吐き出していけば、余程心配してくれていたのだろう。ホッとしたような吐息がこぼされた。


「良かった…虐められてるとかじゃなくて」
「すみません。ビックリさせちゃいまして…」
「気にしないで。インターンが不安だったんだね」
「はい…。個性もまだ探り探りですし、プロの足を引っ張る自信しかなくて…」
「大丈夫だよ。ほら、こんな俺でも、なんとかやっていけてるし…」
「天喰先輩は凄い人です!全然”こんな”じゃないです!」
「あ、ありがとう…」


照れくさそうなぎこちない笑みに、思わずつられる。慣れていない感じが可愛い。

アサリのお味噌汁を啜った先輩は「とにかく、みょうじさんなら大丈夫だよ。何の安心にもならないと思うけど、俺が保証する」と、優しく背中を押してくれた。


おかしいな。緑谷くんや梅雨ちゃんが励ましてくれた時は、失礼ながらこんなに安心しなかったのに、天喰先輩はやっぱり凄い。胸が温かくて、さっきまで何も受け付けなかったお腹が嘘みたいに減ってきて、先輩とのご飯が嬉しくて。


「有難うございます。天喰先輩」
「お役に立てて良かった。…ほら、食べよう」
「はい。いただきます!」


ご飯が美味しいって幸せだ。

天喰先輩のハンカチはお守りとして、インターンが終わるまでお借りすることにした。そんな物でいいのかと焦っていたけれど、十分だった。




※夢BOXより【天喰環が自信のない後輩ちゃんを励ます】




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