出逢いと誕生に祝福を




デクくんは、クラスの人気者だ。たまたまプリントを届けに来た相澤先生を巻き込んで、お昼は盛大なサプライズバースデーパーティーが開催された。

計画は二日前から水面下で綿密に。当日は、間違ってデクくんが共用スペースにおりてこないよう、飯田くん達で足止めまでしてもらった。もちろんサプライズは大成功。私達も楽しかったし、デクくんも物凄く喜んでくれた。ちなみに、爆豪くんは実家に帰省していて不在である。

心置きなく気兼ねなく、皆でわいわいがやがやし終えた夕方頃。唐突に背中を小突かれた。


「片付けは俺らでやっとくからさ。みょうじと緑谷は先に休んでろよ」


そう笑った上鳴くんに、二人揃ってエレベーターへ押しやられる。たぶん、後は恋人同士でってことだろう。なんだか申し訳ない。

お言葉に甘えて、両手いっぱいのプレゼントを抱えたデクくんの代わりに、上階のボタンを押す。何か持とうかって申し出は、失礼なような気がしてやめた。


「退けられちゃったね」
「そ、そうだね」


付き合いはじめて二ヶ月。彼の笑顔がぎこちないのは、二人っきりの空間にまだ慣れないからだろう。
こういう、裏表がなくて等身大なところが好きだなあって思う。デクくんには、他の男の子にはない魅力がたくさん詰まっている。


「誕生日おめでとう」
「うん、有難う…なまえちゃんもいっぱい頑張ってくれたって、飯田くんから聞いたよ」
「そんな、私なんて全然…。不器用だから、あんまり上手く手伝えなかったし」
「それでも、一生懸命準備してくれたんだよね。嬉しいよ。すっごく」


言葉通り嬉しそうな、照れくさそうな、真っ直ぐでいてとても柔らかな笑みに胸が鳴った。

心が下を向いてしまいそうな時、いつも優しくすくい上げてくれるデクくんは、いつだってかけがえのない、私のヒーローだ。



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