まったりデート




寮から一緒に出ると注目の的になってしまう、というわけで決定した待ち合わせ場所のバス停で、心操くんは既に待ってくれていた。ごめんねって謝ると「そんな待ってないよ」って、ほんの少し口端を緩める。

付き合うようになってからというもの、元々の優しさが顕著に感じられるようで、なんとなくむず痒い。良い人だなあって思う。乗り込んだバスの中で、そう話す。


「俺からすれば、みょうじさんの方が良い人だよ」
「そう?じゃあ、お互い様だね」
「そうだね」


やっぱり優しい眼差しに、自然とこぼれる笑み。彼の隣は居心地がいい。いつも穏やかなこの空気感が好きだった。


目的地付近でバスから降りて、どちらからともなく手を繋ぐ。メイン通りから一本はずれた道沿い。目当ての看板が示すままに足を進めれば、可愛らしいデザインの猫カフェが見えた。

つやつやとした手触りのサバ猫。毛足の長いメインクーン。耳が垂れたスコティッシュフォールド。気品溢れるロシアンブルー。私の上半身くらいあるんじゃないかってほど大きなジャンフォレストキャット等々。いろんな種類の猫が揃っているここは、もっぱら週末の癒しスポットだ。

いつも通り、お昼までの二時間コースで入店すると、猫たちがわらわら出迎えてくれた。




「寝方凄いな」
「ふふ、リラックスしてるんだろうね」


私の膝の上。仰向けの万歳姿勢で眠っている黒猫の喉元を撫でる。足先までぴーんと伸びている姿は、まるでフェレットのような長さ加減でとっても可愛い。きっと完全に寝入っているのだろう。喉を鳴らす気配すらなく、どれだけ撫でても微動だにしない。

のそのそ寄ってきた他の猫達は、喉を鳴らしながら心操くんに擦り寄っていた。それがなんとなく羨ましくて、彼へ肩を寄せる。この人は私のなんだよー。


「どうかした?」
「んー…ちょっとジェラシー、みたいな」
「え、猫に?」
「お恥ずかしながら…」


今更な照れくささを、笑って誤魔化す。

それでも、私が安心するようにか。こっそり片手を繋いでくれた心操くんは「そういうとこ、可愛くて狡いと思う」と、猫を撫でながら言った。ほんのり耳が赤かった。




※夢BOXより【心操くんとまったりデート、猫と戯れながら】




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