ふわふわ叙情




鏡に向かいながら、明るい色の髪で遊ぶ。あちこちへ跳ねる後れ毛を束ねながら、編み込んでみたり、ポニーテールをしてみたり。
ほんのり香る甘い匂いは、この間あげたトリートメントだろうか。私には合わなかったけれど彼女にはぴったりで、癒し効果が高いように思う。


「楽しいです?」
「うん、とっても」
「ふふ、なまえちゃんが楽しいと私も嬉しいから嬉しいです」


鏡越しに目が合ったトガちゃんは、そう、口元へ手を当てて笑った。

いつも両サイドでお団子にしている彼女だけれど、顔が可愛いからか小顔だからか、どんな髪型でも似合う。私もこんな風だったらなあなんて考えて、直ぐにやめた。手に入らないものを願うより、今持っているものを活かす術を探し当てる方が賢いのだと、さっきから後ろで転がっている継ぎ接ぎだらけの皮膚をした彼に教わったのだ。


「三つ編みかぁいいねぇ」
「じゃあ今日はこれにしよっか」


頷くと共に乱れた髪をすくい直し、耳下で三つ編みをする。少しだけ編み込んだ部分をほぐしてやれば、いつもとは雰囲気の違うトガちゃんが出来上がった。「なまえちゃんありがとです!大好きぃ」と、うりうり引っ付いてくる姿がなんとも可愛い。本当に可愛い。今日も天使が天使で可愛い。

私も大好きだよってうりうり仕返してたら、寝返りを打った荼毘の何とも言えない半開きの視線が刺さる。


「何よ」
「………いや」
「荼毘は入れてあげないよ」
「いらねえし」




back