冬の越し方




二月も半ばを過ぎたというのに、春はどこへ行ってしまったのか、一向に訪れる気配がない。

あまりの寒さに、そろそろいいだろうとしまい込んだこたつ布団を引っ張り出す。ついでに敷物もホットカーペットに戻して電源を入れ、一旦席を外してから戻れば、こたつから顔だけを出した状態のかっちゃんがいた。思わず笑ってしまったのは言うまでもない。

先程まで何もなかったテーブルの上には、美味しそうな蜜柑が盛られたカゴ。


「猫みたいだね」


携帯を見ているかっちゃんの傍にしゃがんで、くしゃりと髪を撫でる。
普段なら、誰が猫だナメとんのか、なんて喧嘩を売ってくるところだけれど、今日は究極に眠いらしい。「ん」と生返事をしながら大人しく擦り寄ってくる様子が、本当に猫みたいで可愛いかった。


「なまえも入れや」
「狭くなるよ?」
「別にいい」


珍しく、もぞもぞと肩まで這い出てきたかっちゃんは、ここに入れと言わんばかりに隣をあけてから、こたつ布団を上げた。些か狭いけど、まあ、仕方ない。こんな機会も滅多にないだろう。大人しく体を滑り込ませて、広い胸元へ身を寄せる。途端に全身を覆った熱は、こたつなのか、かっちゃんの体温か。

案の定結構狭いけれど、お眠モードの彼はこれで満足らしい。
ギュッと抱き寄せられ「あったけ…」と、呟くような声が降ってきた。

後で蜜柑むいてあげようね。



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