無限愛




何にも代えられない。
比喩しようにも言葉が浮かばない。
そんなものだった。

頭の中ではいろんなイメージが思い描けるけれど、具体的に表すことはひどく難しい。良く言えば、形のないもの。悪く言えば、あるのかすら分からないもの。それでも、表さずにはいられないもの。


「これぐらい相澤さんが好きです」


言いながら、適当に持ってきたメモの切れ端に、数字の八を横にした記号を書いてみせる。無限大を意味するそれは、合理的な彼の目に、いったいどんな風に映っているのだろうか。

目を丸めてメモを凝視している姿は、なんとも愛嬌があって可愛い。


「じゃあ俺はこれくらいだな」


私の手から、するりとシャーペンを奪った指先が、紙の上を移動する。
先程書いた記号が一つ書き足され、その間には掛け算の時に用いるバツ印が一つ。こういったことにはいつものってこないのに、今日はどうしたんだろう。

嬉しさに緩む頬のまま、彼の胸へ飛びつく。「危ねえ」なんて頭を小突かれたけれど、仕方ないなって許容してくれる優しさに甘えた。




back