「夢だけ見てろ」




綺麗に落ちていく。
あんなに怖くて仕方がなかった微睡みの中に、すんなりと沈む。

最近、幸せな夢ばかりを見るようになった。時々、クラスの皆が登場する。とても喜ばしいこと。その反面、暗い夢を見ることが、一段と怖くなってしまった。


「来いや湯たんぽ」
「湯たんぽ…私そんなあったかい?」
「ねえよりマシ」
「ひどい」


辛辣ながらも優しい爆豪くんの言葉に甘えて、あけてくれた隣へ潜り込む。ちなみに冬場は湯たんぽで、夏は冷えピタと呼ばれる。彼なりの照れ隠しは、随分実用的だ。

背中に回った腕に抱き寄せられ、あたたかな胸に鼻先を埋める。好き、なんて言葉はくだらないと一蹴されるけれど、こうして傍に置いてくれるあたり、気に入られているのだろう。


瞼をおろす。

手を伸ばさなくても、すぐそこに爆豪くんがいる。人肌があたたかい。鼓膜を覆うのは緩やかな心音と、小さな秒針の音。たったそれだけなのに、ひどく安心して、やっぱり今日も綺麗に落ちていく。

薄れる意識の中で聞こえた声は、淑やかに私の心を奪っていった。




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