胸を焦がす光




いつも、きらきらしていた。

中学二年の時に同じクラスになって、でも話すことはあんまりなくて、それなのに、俺の名前を漢字で書けるくらい覚えていてくれたみょうじの笑顔は、相変わらず眩しい。


「おはよ、切島くん」
「おう。おはよ」


電車に揺られること一駅。
笑顔で乗ってきたみょうじにつられて、俺の頬も緩む。

雄英より二駅手前の女子校に通っているらしく、赤いチェックのスカートにクリーム色のサマーカーディガン姿が可愛い。前に暑くないのかと聞いたら、UVカット仕様で通気性がいいのだと教えてくれた。


「毎日暑いねー」
「ほんとなー。みょうじんとこは冷房ついてんの?」
「うん!図書室がすごい快適」
「お、さては昼休みにこもってる感じか」
「図書委員だからいいんですう」


おどけてみせる仕草さえ、こんなに可愛く見えるのはどうしてか。

クラスの女子とは違う感覚に、近頃戸惑うことが増えた。


そこそこ混んできた電車内。
扉が開く度に増える人波に、みょうじが攫われてしまわないよう、扉の横へ誘導する。
正面に立つことで、隔てるような壁になってやれば「いつもありがと」なんて笑ってくれるのだから、なんか、こう、胸のあたりがざわざわした。


「切島くんのおかげで毎朝安心だ」
「俺も、みょうじのおかげで楽しいぜ。ありがとな」


誤魔化すように小さな頭を撫でる。
と、唐突に電車が大きく揺れた。素直に跳ねた目前のクリーム色が傾く。
俺の腕が支えるのと、みょうじが手摺を掴むのとは、殆ど同時だった。咄嗟に受け止めはしたものの、なんだか変な感じになってしまった感が否めない。手摺を掴んだまま俺の腕の中におさまるみょうじの大きな瞳が、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。


「び…っくりした…」
「……な。大丈夫か?」
「うん…平気」


驚きの方が勝っているのか、いまいち状況が理解出来ていないらしいふわふわした声。
対して俺は、初めて触れたみょうじが思っていた以上に細いとか、肩幅が狭いとか、何これすげーいい匂いするとか、女子ってこんな軽かったっけとか、そんなことばかりがぐるぐる回ってプチパニックだ。添えていた手を浮かせはしたものの、もうどうしていいか分からない。


慣れない至近距離のせいか、だんだんと顔に熱が集まっていくのが、自分でも分かった。






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