自惚れてもいいですか




暖を求めて身を寄せる。湯たんぽさながらの高体温が眠るベッドは、あたたかい。いくら好き合っているとはいえ普段全くべたべたしない人だから、なんにも気にせずくっつけるのは冬がしのび寄る頃合い、つまり今夜くらいから。

彼の眠りを妨げないよう片袖に、そっと額を当ててみる。けれど起こしてしまったらしい。もしくは端から眠ってなかったかもしれない。


「さみぃんか」


低い声は落ち着いていて、あんまり眠たそうじゃない。

こちらを向いた勝己の腕が私の首下へともぐり、そうして易々抱き寄せられた。浮いた鎖骨、厚い胸板、広がる二人分の鼓動。肩までしっかり毛布と勝己に包まれて、皮膚の外からじわじわ熱が染みてくる。逃げゆく冷気に身震いすれば、一際ぎゅっと抱き締められた。さすがはヒーロー志望というべきか。力加減が、いつもずいぶん心地いい。


「寝にくくない?」
「ンなこと気にしてねえで目ぇ閉じろ」
「うん」
「……丁度いい」
「え? 今なんて、」
「オラ黙って寝ろ」


抱き枕が喋んじゃねえ。後頭部をわし掴まれて、残念ながら勝己の表情は窺えない。乱暴な寝かしつけ方。思いはすれど、頬は緩むし力も抜ける。まさか抱き枕として認定されているなんて、丁度いいって、嬉しいなあ。

正直冬は好きじゃない。寒い気候は苦手だし、なにより勝己の個性の調子がどうも悪い。スタートアップが遅いと必然リスクも上がる。彼のことを知った高校入試から、交戦時、活き活きと火花を散らす姿を見るのが好きだった。でもこうして尻尾をそわせる猫ちゃんみたいに、腕も脚も絡めてくっつく勝己も可愛らしいと思う。

一緒に過ごす初めての冬。初めてふたりで暖まる冬。


「いつでも呼んでね」
「クソなまえ……しっかり聞こえてんじゃねえか」


髪を梳いてく指と声は、なんともバツが悪そうだった。


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