ガザニアをそえて




モニター越し。B組に対して圧倒的な完全勝利をおさめた勝己は、いつも以上に輝いていた。粗雑ながら彼らしい行動からありあり窺えた仲間への信頼は当然嬉しく、抜群のセンスでパイプだらけの狭いエリアから空まで自在に飛び回る姿は他の誰より鮮烈で、容赦なくぶっ放される派手な個性に惹き付けられた私の心は高鳴るばかり。思えば、あんなに活き活きとした勝己を見ること自体久しぶりだったからかもしれない。

未だ大きく脈打つ鼓動を抱えたまま。上鳴くん達と離れては、緑谷くんに何やら吠えて歩いていった背中目掛けて地面を踏み切る。


「勝己!」
「あ? ―――ッ、!」


振り向いた赤眼がギョッとして、けれど瞬時に広げた腕で私をしっかり受け止めてくれた。


「ッぶねえだろクソなまえ!急に飛び込んでくんじゃねえ!!」
「すごいよ勝己!完全勝利!!めちゃくちゃかっこよかった!!!」
「聞けやカス!!!!」


近距離で怒鳴られたってなんのその。この高揚感を鎮静させるには不十分。

太い首に腕を回してぎゅうっと強く抱き着けば、宥めるように、あるいは面倒くさそうにぽすぽす背中をたたかれた。ついでに宙ぶらりん状態の私の膝裏をすくいあげ、ちゃんと抱えてくれるんだから笑ってしまう。憧憬とはまた違った熱が湧きたって、皮膚の下を勝己の温度が占めていく。


「ったく落ち着けクソカス……」


呆れ混じりの低声が、鼓膜の傍で息を吐く。


「この俺が雑魚相手に負けるかよ」
「や、勝つとは思ってたけどさ。ほら、チームアップじゃん? 耳郎ちゃん達もいたのに5分かかんないってびっくりした」
「ハッ、舐めんなクソ余裕だわ」


ちっとも嬉しそうじゃない顰めっ面とは裏腹に、身を屈めながらゆっくり地面へおろされる。私の両足がついたことを認識してから離れた手は、普段と同じ。分かりにくくて不器用な、愛しい優しさを秘めていた。



back