勉強を見てもらう




返ってきたテストは赤点スレスレ。何をやってもダメな自分が嫌になるのは、もう何度目か分からなかった。勉強も運動も個性の練習も、別にサボっているわけじゃない。むしろ、人一倍と豪語していいくらいには頑張っているつもりだ。それでも結果が出ないのは、まだまだ努力が足りないのか、そもそもの伸び代がないのか。

沈んだ心を溜息に乗せて、無理やり浮遊させる。落ち込んでなんかいられない。そんな暇なんか、いつだって三歩出遅れている私にある筈もなかった。


「爆豪くんんー……」
「何情けねえ声出しとんだアホなまえ。またやらかしたんか?」
「やらかしてはないけど、復習付き合って欲しいです……」
「チッ、座れや」
「ありがとー」


いつも通り横へ寄ってくれた爆豪くんの隣。一つのイスを分け合うように並んで座り、必然的に半身がぴったりくっ付く。この近過ぎる距離感が、彼と私の普通だった。「ほんと仲良いよなー」って切島くんの小さな声。聞こえていないのか、気にしていないのか。爆豪くんは顔を上げることもなく、うるせえって言うでもなく、赤ペンを走らせた。

国語も数学も英語も何だって人並み以上に出来る彼の補足は、いつも的確で分かりやすい。説明だってそう。意外と丁寧に一から十まで教えてくれる。怒るでもなく、責めるでもなく、呆れるでもなく。ただ根気強く、ひとつひとつ。


もそもそ動く肩に頬を預けながら、噛み砕かれた公式とともに、罪悪感と自己嫌悪を呑み込む。


「ごめんね。いっつも」
「あ?」
「物覚え悪いし、バカでドジだし、迷惑かけちゃって」
「はっ、くだらねえ。今更だろうがんなモン」


置かれた赤ペン。役目を終えて背中に回された片腕に、くしゃくしゃ頭を撫でられる。荒い言動とは裏腹な、優しい手。触れ方。体温。声。


「つーか、てめえが頑張ってることなんざ知っとるわ。しっかり前向いてろザコ」


かろうじて拾えるくらいのボリュームで吐き出された励ましは、ひどくぶっきらぼうで爆豪くんらしくて、じんわり胸があったかくなった。

努力をひけらかしたことは決してない。なのに、ちゃんと気付いて見てくれている人がいるって言うのは、どんな応援よりも心強い。



※夢BOXより【勉強も運動も努力はしているのに出来ないヒロインが、爆豪くんに勉強やトレーニングを見てもらうシチュエーション】




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